ミステリーな森の生活

洋書ミステリー、英語学習、洋画レビューなどから始めましたが、今は、種々雑多(山岳小説、落語など)です。

ある一生(ローベルト・ゼーターラー)

2020年07月09日 | 山はミステリー

「山と渓谷」の中で、感動した山関係の小説の中に本書があり、読んでみた。

裏表紙の宣伝文句が、すごい。
「人生を織りなす、瞬くような時間。恩寵に満ちた心ゆすぶられる物語。」

ある男の人生を淡々と描いているだけの小説だ。

簡単にストーリーを言うと、
生まれて、母親が亡くなり、親戚に引き取られるが、何かあると鞭で打たれる
ような厳しい環境だった。

やがて、成人して、妻との幸福な生活を得るが、雪崩により、妻は帰らぬ人となる。

そして、戦争に負けて、ロシア軍に収容所に送られる。

そこでの過酷な生活にも耐え、戻ってくる。

元の仕事に戻れなくなり、山のガイドを務めるようになる。そして、80年の生涯を
終えるというものだ。

「書かれた内容も方法も非常に静かだが、大きく響き渡る。自身の魂を喜ばせたい者は、
この本を読むべきだ。」という書評もあるが、果たしてどうであろうか?

確かに、静かな文章だし、美しい文章と感じた。また、面白く読めたのだが、この書評
のように感動したり、涙腺がゆるくなるようなことは感じられなかったのだ。

何故だろう?実在の人物ではないせいか?

雪崩で妻を失ったときも、本人が、亡くなる6か月前に、痴ほう症になりかかりつつありながら、
まだ、お迎えは来ていないと認識するのも、ごくごくありそうなことだからか?

魅力のある作品であることは確かだが、あまりに淡々としており、心を動かすことがなかった
不思議な作品でもあった。




 

 

 


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