「山と渓谷」の中で、感動した山関係の小説の中に本書があり、読んでみた。
裏表紙の宣伝文句が、すごい。
「人生を織りなす、瞬くような時間。恩寵に満ちた心ゆすぶられる物語。」
ある男の人生を淡々と描いているだけの小説だ。
簡単にストーリーを言うと、
生まれて、母親が亡くなり、親戚に引き取られるが、何かあると鞭で打たれる
ような厳しい環境だった。
やがて、成人して、妻との幸福な生活を得るが、雪崩により、妻は帰らぬ人となる。
そして、戦争に負けて、ロシア軍に収容所に送られる。
そこでの過酷な生活にも耐え、戻ってくる。
元の仕事に戻れなくなり、山のガイドを務めるようになる。そして、80年の生涯を
終えるというものだ。
「書かれた内容も方法も非常に静かだが、大きく響き渡る。自身の魂を喜ばせたい者は、
この本を読むべきだ。」という書評もあるが、果たしてどうであろうか?
確かに、静かな文章だし、美しい文章と感じた。また、面白く読めたのだが、この書評
のように感動したり、涙腺がゆるくなるようなことは感じられなかったのだ。
何故だろう?実在の人物ではないせいか?
雪崩で妻を失ったときも、本人が、亡くなる6か月前に、痴ほう症になりかかりつつありながら、
まだ、お迎えは来ていないと認識するのも、ごくごくありそうなことだからか?
魅力のある作品であることは確かだが、あまりに淡々としており、心を動かすことがなかった
不思議な作品でもあった。
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