文芸翻訳家、越前敏弥氏の好著だ。
氏は、ひとことで表現すると、翻訳とは、
「原著者が仮に日本語を知っていたら、そう書くにちがいないような日本語にすること。」
とのことだ。
翻訳の10箇条をかいつまむと、下記になる。
1.英、国語辞典をこまめにひく。
2.機械的に代名詞を訳さない。
3.直喩は直喩。隠喩は隠喩。
4.もとの味わいを生かす。
5.事実確認をしっかり。
6.日本的すぎる訳語は避ける。
7.自分の知識など知れていると自覚。
8.ジャンルの文体を知る。
9.主人公の視点を忘れない。
10.妥協しない。
誤訳率90%の英文の例が素晴らしい。
He arrived on a soccer scholarship from Manhattan,
Kansas,home of Kansas State University and maybe
forty or fifty other people.
ある生徒の訳:
彼はサッカー奨学金を得て、他の4,50名と一緒にカンザス州立
大学のあるカンザス州マンハッタンからやってきた。
修正例:
彼はサッカー奨学生としてカンザス州マンハッタンからやってきた。
カンザス州立大学が鎮座し、大学関係者を除けば人口がたぶん
4,50人の町だ。
andが、あるので、home of (maybe)forty or fifty other people
と読むべきとのこと。
なるほど、私も90%の仲間だ。大学のある町で、4,50人の町なんて
想像も付かない。しかも、田舎町の名前がマンハッタンなんて意地が悪い。
前著、「日本人なら必ず誤訳する英文」もぜひ読んでみたいものだ。
洋書を読んでいても、ときどき、おかしいと思いつつ、読み飛ばして
しまい、読解力をつけたいと思っていたが、この本は、まさに目から
うろこの好著だと言える。
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