山岳冒険小説の最高峰とまで言われる「北壁の死闘」を読んだが、
これは、最高峰、比類なき傑作と言うにふさわしい作品だと思った。
まず、アイガー北壁で氷漬けのナチ軍人の死体が発見される。首には、
女性の写真の入ったロケットと、名前入りの勲章が付けられていた。
第二次大戦の末期に、原子爆弾の開発をめぐってナチ・ドイツが、
精鋭のクライマーを集めて、スイスで研究中の科学者を確保するための
作戦を展開する。
この作品を読んでいて、その文章の格調の高さに驚かれる。
読んでいて、ノンフィクションではないかと錯覚を覚えてしまうほどなのだ。
それだけ、登山シーンも、迫真であり、スリルに満ち溢れている。
400ページの作品だが、100ページを読んだあたりから、止まらなくなり、
一気に読んでしまった。
主人公や、登場人物も、魅力のある人物になっている。
そして、最後に、BBCの調査員が、生き残った戦闘員にインタビューし、
ロケットの写真の女性に見つけ出すのだ。
この最後の章で、やっと、フィクションを読んでいたのだと引き戻される
とともに、心地よい終わり方に満足感でいっぱいになるのだ。
冒険小説の中で、なぜか、原子爆弾がテーマになることがあるが、
第二次大戦で、原子爆弾開発競争があったのは、事実であり、その史実が
あるだけに、決して、突飛な感じがないのが、他の作品とは根本的に
違うのだ。
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