澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「東アジア史の実像」(岡田英弘著作集6)を読む

2016年08月28日 17時04分26秒 | 

 「岡田英弘著作集Ⅵ 東アジア史の実像」を改めて手に取ってみた。岡田英弘氏は東洋史(モンゴル史)の碩学で、「岡田史観」というべき歴史観には数多くのファンがいる。もちろん、私もそのひとり。

 本書は、1968年から86年ころまでのエッセイ、史論を集めたもの。(詳細は、下記のとおり。)

 「欧米人も日本人も混同しているが、清朝は満洲人の国家である。しかも、清朝時代の二百六十数年間を通じて、清朝は一種の連邦であった。満洲、モンゴル、シナ、チベット、新彊が、連邦を構成する単位である。そして満洲人、漢人、モンゴル人、チベット人、それに新彊のいわゆるウイグル人に、それぞれ適用する別個の法典があり、それに基づき別々に統治されていた。
 しかも、漢人が帝国全体の統治に関与したという事実はない。帝国を支配していたのは満洲人である。したがって、日清戦争で日本が勝った相手は清帝国であり、中国ではなかった。日本に割譲される前の台湾は、満洲人の領土であった。つまり日清戦争は、日中戦争ではない。そのことを現在の中国人は故意にぼかしている。」(p.358 「高揚する”一つの中国、一つの台湾論”」)

「経済的な面でも、日本の植民地統治は、世界の帝国主義の中でも例のない統治であった。というのも、植民地への技術移転をたいへん積極的に行ったからである。資本を投下し現地で産業を興そうと、非常に努力した。砂糖も、じつはキューバ産を買えば、はるかに安く輸入できたにもかかわらず、台湾経済を維持するために、二割増しで台湾の砂糖を買っていた、ということも指摘された。これらはすべて、台湾の学者が指摘したことである。私としては、それを聴いて、日本統治がいかに良かったかがわかり、たいへん気をよくした。
 みなはそこまで口に出して言う勇気はないが、本音は、台湾人のアイデンティティと台湾文化は日本時代に作られたのであり、それ以前の清朝時代ではなかったと言いたいのである。」        (p.372 「李登輝の深謀、江沢民の焦慮」)

「台湾人の対日感情が良いのには、二つ理由がある。台湾では、1947年2月28日に起こった二・二八事件で、国民党の中国人が台湾人を大虐殺した。それ以来、こんなヤツらに統治されるのは嫌だと、中国人に対して気持ちが冷めてしまった。そして、少なくとも日本人は、裁判にかけないで銃殺するようなことはしなかったということで、日本の株が急に上がった。
 もう一つの理由は、日本領有以前の台湾が国家ではなく、蕃地だったからである。そこを日本が統治して開発したのであり、台湾の人たちの意識はまったく日本人になっていたのに、突然、1945年に中国人に切り換えさせられた。そこのところで、ずいぶん傷跡がある。
 韓国人が、日本を目の敵にして攻撃するのは、重大な理由がある。それは、韓国文化というものの実体がないからである。今の韓国文化と言われるものは、日本の文化の模倣に過ぎない。だから、今でも韓国では日本語の歌をそのまま放送することや、日本の映画を放映することに、断乎として反対している。日本からの文化の流入を自由化したとたんに、韓国文化が跡形もなく崩れ去ってしまう、という危機感にかられているからである。そのことを韓国人に言うと、烈火のごとく怒るが、本当のことである。そういう点を、われわれは理解しなければならない。韓国人のアイデンティティというのは、日本人を憎むことしかないのである。」(p.527-8 講演「台湾人は中国人か」)

 上記の引用は、アットランダムに過ぎず、他にも従来の歴史認識が覆されるような、鋭い指摘が目白押し。ネトウヨの中には、この岡田氏の著作を参考にして、引用する向きも多いようだ。
 だが、重要な点は、著者のエッセイは単なる思い付きなどではなく、世界的な東洋史学者としての実証的な文献研究から抽出された成果に基づく発言だということ。つまり、凡百の評論家や歴史学者が特定の政治的立場・イデオロギーで発言するのとは全く異なる。
   
  「岡田英弘著作集Ⅵ 東アジア史の実像」

台湾、満洲、チベット、韓半島……シナ文明と密接に関わる周辺地域を、どう見るか。
シナ文明の影響を歴史的にどのように受け、それぞれの緊張関係のなかで今日の複雑な関係を形成しているのか、鮮やかに一望してみせる。
[月報] 鄭欽仁/黄文雄/樋口康一/クリストファー・アトウッド

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 はじめに

第Ⅰ部 清朝とは何か
 満洲族はいかに中国をつくったか
 清朝史研究はなぜ重要か
  〈満洲族、シナ制覇の第一歩〉サルフの戦いを検証する 後金国ハン・ヌルハチと明国
  〈帝国を築き上げた三名帝〉康熙帝・雍正帝・乾隆帝とはどんな人物だったのか
 康熙帝・朱筆の陣中便り
 清朝の多様性を理解するためのキーワード

第Ⅱ部 台湾はどんな歴史をたどってきたか 紀元前から1970年代まで
 台湾通史 台湾人はこうして誕生した
 「ニクソン訪中声明」直後の台湾を訪れる
 田中訪中を前に蔣経国が言うべきだったこと
 日台空路はこうして切れた 大平外相がもたらした、北京も望まなかった断絶
 鄧小平はついに「二つの中国」を認めた
 国民党と台湾人と『美麗島』事件

第Ⅲ部 台湾の命運を握るもの 1980~90年代の情勢分析
 李登輝の登場と「台湾人の台湾」への道
 高揚する「一つの中国、一つの台湾」論
 李登輝の深謀、江沢民の焦燥
 総統選挙直前になぜ中国は軍事威嚇を強行したのか 総統直接選挙と台湾海峡危機
 台湾をめぐるコラム三題

第Ⅳ部 近隣諸国の歴史と社会
 近隣諸国は安保継続を望んでいる
 韓国史をどう見るか 東北アジア史の視点から
 高句麗の壁画発見余話
 チベットの運命 ダライ・ラマ十四世のノーベル平和賞受賞に寄せて
 パンチェン・ラマの悲劇
 イリのシベ族、広禄先生のこと 中華民国時代の新疆の風雲
 東南アジアが意識する文化大国日本
 ベトナム五百年の執念 歴史に見るカンボジア征服の経緯
 東南アジアの心と言葉
 中曽根ASEAN歴訪と日中関係

第Ⅴ部 発言集


 清朝史関連年表
 台湾史関連年表
 おわりに 初出一覧 図表一覧 人名索引 事項索引

出版社からのコメント

□シナの影響下で盛衰してきた地域□
 本書は、満洲、台湾、チベット、韓国、東南アジアなど、シナの周辺で、シナ文明の影響を受けながら盛衰してきた諸国家および諸民族を扱う。
 第Ⅰ部「清朝とは何か」は、東洋史学者としての私の基礎にある満洲研究の総覧になっている。清朝を建てた満洲人がどのような人たちで、清朝がいかにいわゆる中華帝国ではなかったかが明らかになる。
 第Ⅱ部と第Ⅲ部は、台湾関係の論考を集めた章である。私の中国経験は大陸ではなくもっぱら台湾であった。一九六二年に満洲語文献の調査のために初めて台湾を訪問してから、一時はほとんど毎年のように台北を訪れて故宮博物院で研究調査をしていた。
 第Ⅳ部は、韓国、チベット、新疆、東南アジアなどについて、四十年前から二十五年前に掲載された論考であるが、内容は今読んでも少しも古くなっていない。長い歴史のなかの半世紀程度は、本質的なことには関係がないのである。


東北地方でM5超の地震が続いている…

2016年08月22日 15時56分05秒 | 社会

 リオ五輪騒ぎでほとんど周知されていないが、この三日間、東北地方でM5以上の地震が続いている。(下表参照)

 不安を煽るつもりは毛頭ないが、東北大震災(2011.3.11)の前々日、前日の二日間で、M5以上の地震が異常なほど多発した事実を思い起こすと、今後の動向に注目せざるをえない。

各地の震度に関する情報

情報発表日時

検知日時

震央地名

マグニチュード

最大震度

平成28年08月22日15時16分

22日15時11分頃

宮城県沖

M5.2

震度3

 

 

 

 

 

平成28年08月21日21時58分

21日21時49分頃

三陸沖

M5.1

震度2

 

 

 

 

 

平成28年08月21日01時32分

21日01時28分頃

三陸沖

M5.2

震度1

平成28年08月21日01時15分

21日01時10分頃

三陸沖

M5.5

震度2

平成28年08月21日01時02分

21日00時58分頃

三陸沖

M5.9

震度3

 

 

 

 

 

平成28年08月20日18時06分

20日18時01分頃

三陸沖

M6.0

震度3

平成28年08月20日14時20分

20日14時15分頃

三陸沖

M5.3

震度2

 






 


五輪喧噪、生前退位、そして尖閣危機

2016年08月11日 08時14分32秒 | マスメディア

 史上まれにみる猛暑と騒がれた今夏だが、平凡な夏に過ぎなかったことは明らか。気候的にはそうであっても、世間は何やら騒がしい。



 これは尖閣諸島に集合した230隻もの中国”漁船”の写真だというのだが、TVで放送されたのを見たことはない。TVでは「中国脅威論を煽らない」が内規となっているので、衝撃的な映像を視聴者に見せて、国民の間に”ナショナリズム”を生じさせることはタブー。なので「中国にはいろいろな内部事情があるから」という噴飯ものの解説で誤魔化そうとしている。

 政府やマスメディアにとって、勿怪の幸いだったのがリオ五輪。「今日も金メダル・ラッシュ」と騒いでいれば、尖閣諸島をめぐる危機を国民に知らせずに済む。
 この国のエリートたちは、今なお「愚民には知らしむべからず」と思っているのかもしれない。

 天皇の「生前退位」については、心情論が中心になって、コトの本質がはぐらかされている気がする。80歳を超えた闘病中の老人が、年間何百日もの「公務」に携わるのはお気の毒だ。これが一般的世論だろうが、何と浅はかな認識かと思う。天皇は、私人でも一般国民でもないのだから、日常的感情で陛下に”思い”を寄せても、思わぬしっぺ返しがくるのがオチだ。

 先の天皇夫妻のパラオ訪問は「平和を願う」天皇の「美談」として伝えられた。だが、父親である昭和天皇の言動を思い起こすなら、現天皇が本当にあの戦争の意味を理解しているのかどうかが、極めて重要だ。父親は軍部に翻弄された存在に過ぎず、戦争責任はなかったと考えているのか、そうではないのか?現在の天皇自身の歴史認識が伝わってこなければ、パラオ訪問だって御身可愛さゆえのパフォーマンスと言われても仕方ない。「美談」はいったん疑ってかかるというのが、世界の常識ではないのか。

 思わず本音を書いてしまったが、止めの一発はこれ。東京五輪なんて、本当に開催できるのだろうか?目下、世間は「おもてなし」「日本は素晴らしい」という空気に満ち満ちているが、自画自賛、付和雷同を一枚めくれば、そこには深い不安感が横たわっているはずだ。私は、東京五輪など、60%以上の確率で開催できないと思っている。肝心なことから眼をそむけ、一過性のバカ騒ぎに熱中するこの傾向。そんなに長く続くはずもない。
 

 
 
 

 

  

 


小池都知事が追及すべき東京五輪招致疑惑

2016年08月06日 07時39分42秒 | 政治

 小池都知事が誕生して、東京五輪をめぐる数々の疑惑が語られ始めた。まことに結構なことだと思う。

 このブログでは、「東京五輪招致 竹田JOC会長の疑惑と利権」という記事を書いたことがある。竹田JOC会長が東京五輪招致に当たってIOC関係者に不正献金をしたことは、「週刊文春」などで採りあげられたものの、舛添要一の「疑惑追及」の陰に隠れてしまった。何故、東京五輪招致が不正献金をしてまで強行されたのか、その首謀者は誰なのか追及されてしかるべきだ。

 竹田会長については、IOC不正献金問題とは別に、自らが経営する旅行会社がJOCの旅行業務を一手に受託しているのではないかという疑惑がある。

 あの東日本大震災・福島原発事故があってもなお、東京五輪招致を強行した理由が、竹田恆和、森喜朗などの五輪関係者の私腹を肥やすためだったとあれば、それこそ売国奴の所業だと思うのだが…。ぜひ小池知事に追及してもらいたいと思う。

 

竹田氏がIOC役員改選に立候補検討 疑惑の行方踏まえ判断

 竹田会長は12年にIOC委員に就任。東京五輪招致では招致委員会の理事長として開催都市決定の投票権を持つIOC委員へのロビー活動で中心的役割を果たした。14年からはIOCのスポンサー集めを担うマーケティング委員長を務めている。JOC内には、自国開催の五輪が4年後に迫っていることから、竹田氏のIOC役員就任を望む声もある。

 日本人では猪谷千春氏が09年までIOC副会長を務めた。

                         《産経ニュース》