「理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい~100歳の台湾人革命家・史明自伝」(講談社 2018年12月)を読む。
著者・史明(1918.11.9~ )は、百歳になってなお「台湾独立」を志向する台湾人革命家。日本統治時代の台湾に裕福な一族(施一族)として生まれ、日本で高等教育を受けた彼は、日本敗戦後、台湾に「流亡」してきた蒋介石政権に反対し、東京で台湾独立運動を続ける。その結果、中華民国政府(台湾)から危険分子として追われ、李登輝総統が誕生するまで、故郷・台湾に帰ることができなかった。
先の台湾総統(=大統領)選挙で彼は車椅子姿で蔡英文候補の応援に駆け付けた。蔡英文女史は、「史明おじさんは信念を貫き、誰よりも強い行動力を持つ人です。彼の物語は、台湾、日本、中国の激動の歴史そのものです」(本書の帯文)と彼を評する。
敗戦によって、「大日本帝国」の内外には数多くの悲劇が起きた。連合国側は、日本を二度と立ち上がらせない、日本人を本土四島に閉じ込めることで合意していた。満洲、朝鮮半島などの「外地」から本土へ引き揚げる日本人の悲劇はよく知られている。一方、本土にいた台湾人、朝鮮人は、GHQから「第三国人」とみなされる立場に立った。それにより、経済的利益を得る者も多かったと言われている。だが、「祖国」の喪失と新たな選択に迫られた彼らはまた、「大日本帝国」の崩壊の犠牲者でもあった。
史明の本名は施朝暉。「施」の名字で連想するのが、施光恒(てるひさ)九州大学准教授(政治哲学)。彼らは同じルーツなのかも知れないと思った。