ドイツの楽団というと、アルフレッド・ハウゼ、ウェルナー・ミューラー(リカルド・サントス)などの名前を思い浮かべるが、意外にも米国で人気のあった楽団は数少ない。アルフレッド・ハウゼは日本ではよく知られているが、米国でのレコード販売実績はほとんど無い。
ベルト・ケンプフェルトは、米国でも絶大な人気を得た。「星空のブルース」(Wonderland by night)は、ビルボード・チャートでも1位に輝き、後続の「ブルーレディに紅いバラ」「ラブ」「夜のストレンジャー」なども大ヒットした。
彼の音楽の特徴だが、ビッグバンド+ストリングスという基本的なスタイルに、歌詞を伴わないコーラスを加え、トランペットをフィーチャさせ、エレキ・ベースとドラムスで独特の軽快なリズムを刻むという点にある。
彼は、音響にも注意を払った人らしい。ライブのDVDやCD(ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール・ライブ)を聴いてみると、スタジオ録音と寸分違わない音が出ている。たいがいの楽団は、ライブ盤を聴くと、レコードとは異なるので、ガッカリすることが多いのだが、ベルト・ケンプフェルトの場合はそんなことはない。彼の録音へのこだわりを感じさせるのだ。
編曲の多くは彼自身が行ったようだが、ワン・パターン気味の「ケンプフェルト・サウンド」には、好き嫌いが分かれるところだ。リアルタイムでは、彼の演奏を「また、こんなアレンジか…」と思ったこともある。
昨日、レイモン・ルフェーブルの死去が伝えられたばかりだが、ベルト・ケンプフェルトの音楽は、その一部がジェームス・ラストに引き継がれているように思う。だが、そのジェームス・ラストも高齢を理由にコンサート活動を止めたばかりだ。
こうして、「ムード音楽」の時代は、過ぎ去っていく…。