シャルメーヌ~ベスト・オブ・マントヴァーニ | |
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キングレコード
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7月11日、キングレコードよりマントヴァーニ楽団の新譜CDがリリースされた。3月に英国EMI・アビーロード・スタジオで録音された最新CD。
この新譜について、私はアマゾン上で次のように記した。
「マントヴァーニが亡くなって30年以上、1963年の来日公演からは半世紀が経つ。それでも最近までマントヴァーニの名を冠した楽団が米国から来日し、全国各地を廻っていたが、4~5年前からぷっつりと消息を聞かなくなった。本CDを演奏しているマントヴァーニ楽団は、頻繁に来日していた団体とは無関係で、英国でのコンサートのために臨時編成された「マントヴァーニ楽団」のメンバーによるもの。日本のキングレコードが依頼し、今年の3月5・6日、ロンドンのEMI・アビー・ロード・スタジオ(スタジオ2)で録音された。指揮はピーター・ヘミング、楽団編成は、オリジナルと同じ編成の42名。
20曲のほとんどがバラード調のスローな曲なので、全体として盛り上がりに欠ける印象。マントヴァーニの音楽をできるだけ忠実に再現しようとした意欲は感じられるものの、オリジナル演奏と比べてどうなのかと言えば、心許ない部分も多々ある。例えば「魅惑の宵」「シャルメーヌ」におけるカスケーディング・ストリングスの奏で方は、オリジナルと比べてぎこちなく、ようやく音を合わせたような印象を受ける。また、極度に弦楽器をクローズアップしたデッカ録音とは異なって、楽団全体の響きを収録したデジタル録音なので、かえってストリングスの美しさは減退している。
「サマー・ナイト」は珍しい選曲で、よくできた演奏。「ムーラン・ルージュの唄」のアコーディオンの音には、ちょっとビックリ。「シャルメーヌ」のバックで、打楽器がワルツの3拍子を無粋な音で刻むのには参った。
それでも、マントヴァーニ亡き後にリリースされた「マントヴァーニ楽団」のCDの中では、本CDが一番オリジナルに近いと言えるかも知れない。
オリジナルのマントヴァーニ楽団のCDでも、英国・Vocalion盤は、かなり音が加工されているので、往年の華麗なデッカ・サウンドを求めるのは難しい。オリジナルのサウンドを最も色濃くのこしているのは、「華麗なるマントヴァーニの世界」(ユーキャン発売 CD10枚組)だと思われる。」
この感想で☆4つとは、大甘だったと今では反省中。というのは、私の友人が次のような批評をしているからだ。これは実に的確、胸の支えが降りるような一文だ。
上記のジャケット写真をクリックすると、アマゾンに繋がり、収録曲を試聴できるので、以下の批評を読み、実際に曲を聴いていただきたいと思う。そうしたら、貴方はこのCDを買う、買わない?
買ってはいけないマントヴァーニの新譜
ムード・ミュージックのファンでその名を知らぬ者のないマントヴァーニ。
そのマントヴァーニ・オーケストラの新譜が出たと友人が教えてくれた。収録されているのはマントヴァーニ自身が作曲した2曲を含む全20曲。
早速、機会が得られたので聴いてみた。ひと言でいえばガッカリ!
ロンドンのアビーロード・スタジオでの録音は最新のものなので文句のつけようがない。問題は肝心の演奏そのもの。
スコアはオリジナルを踏襲しているが出てくる音は全く異質なものだ。メトロノームが指揮しているような単調なリズムに終始し、マントヴァーニ特有のうねるようなストリングスが聴かせる高揚感が少しもない。つまり譜面にある音譜を忠実に音に置き換えているだけなのだ。これでは“音楽”とはいえない。
この録音に立ち会った指揮者も録音技師も、マントヴァーニへのリスペクトなど露ほども持ち合わせていないようだ。
1980年に亡くなったマントヴァーニは大変人気があり、今も生前の録音が繰り返し発売されている。
と同時に新録音も次々出てくる。これは当然ながら後世の音楽家がマントヴァーニの名義で演奏したもので、ここで取り上げた演奏もそのひとつだ。音楽ビジネスに関わる者としては今でもマントヴァーニは金のなる木なのだ。CDも発売されるしオーケストラも存在する。嘗ては日本にも毎年のように来演した。
だがそれらはマントヴァーニの名を貶めるだけなのだ。演奏も下手だし録音も良くない。
そんなこと言うけど、マントヴァーニ自身の演奏だって録音のテクニックで上手く誤魔化していたんじゃないかって?
確かに英DECCAの録音が華麗なマントヴァーニ・サウンドにひと役買ったことは否定しない。しかし演奏技術は録音で誤魔化しようがない。マントヴァーニ自身のマントヴァーニ・オーケストラは一級の腕を持った音楽家の集団だった。
1963年、ただ一度の本物のマントヴァーニ・オーケストラの来日公演を東京文化会館で聴いた者として、それは断言できる。