《李登輝氏のいま》
李登輝研究の第一人者であるI教授によれば、九十歳を超えた李登輝氏は、持病があり入退院を繰り返している状況だという。だが、依然として矍鑠としており、雑誌「Voice」12月号に『「死」して日台の運命を拓くとき』が掲載されている。
このインタビューではまず「中間層のいない中国の悲劇」が語られ、「2016年の台湾総統選挙」を見通し、「日台は真の”主権在民”を確立せよ」「”武士道”は中国の伝統から脱却する梃子(てこ)」「日本版”台湾関係法”の制定を」などについて触れられている。
台湾の将来については、つぎのようなやりとりが交わされている。インタビューアーは、井尻秀憲・東京外国語大学教授。
井尻 今後、中国と台湾との「両岸関係」はどうなっていくのでしょうか。
李 2016年の台湾総統選挙によって方向が決まるでしょう。いまの馬英九政権は、中国一辺倒の政策をとっています。中国との関係を強め、いわゆるサービス業の貿易協定まで提供しようとしている。…仮に中国からサービス業者がどんどん入ってくると、台湾市場は上から下まで根こそぎ支配されてしまう。
井尻 私もまったく同感です。次の総統選で民進党が勝てなかったら、もう台湾は危ない。「中台統一」という方向に向かう可能性が十分にありますね。
… … …
李 大陸との関係がより密接になる可能性は十分あります。ただし、国民党と民進党以外に、第三グループから人間がでてくるかも知れない。現時点でそれはまだはっきりしません。いずれにせよ、「台湾は中国の一部ではない」ということだけは、はっきりさせておかなければいけない。アメリカは台湾と同じような移民の国ですが、イギリス人は「アメリカはイギリスの一部」などと口にはしない。そう考えれば、「台湾は中国の一部」という中国の論法がいかにおかしいか、よく理解できるでしょう。
《今後の両岸関係はどうなるか?》
専門家によれば、次のような予測が成り立つという。
① 尖閣問題は五年後の日中外相会談で話し合うことで合意ができている。
② 中国共産党は、ほぼ10年後には権力から下野する。それはすなわち、中国の民主化が始まることを意味する。
③ 李登輝氏は次の総統選挙では国民党が勝つと予測している。
④ 国民党の候補として人気が出てきたのが連戦氏の息子。この人は、台湾人意識が強いらしい。
⑤ 台湾人としてのアイデンティティを培う教育が必要だが、10年後では人材がまだ育っていない。10年後に中共が下野するとき、台湾はどうなるのかという問題がある。
⑥ 結局、中国は七つの省からなる連邦共和国になって、そこには台湾、香港が含まれる。台湾には独自の軍隊が維持され、その管理は米中共同で行う。
台湾の国民は、3.11東日本大震災のときに230億円もの義捐金を送ってくれた。一人あたりに換算すると、なんとこれは大陸からの義援金の五百倍に当たる。これほど「親日的」な理由は、戦後の日本人が立派だったからなどでは全くない。台湾人の7割以上を占める本省人の日本語世代(その代表が李登輝氏に他ならないのだが)が、戦前の日本統治時代を肯定的に評価していたからに他ならない。言い換えれば、それほど蒋介石の国民党は、本省人を弾圧したということだ。
「ひとつの中国」という神話に呪縛されたマスメディアは、中国筋の恫喝を恐れて、日本と台湾の歴史的絆については決して報道しない。このままでいけば、台湾が「親日的」なことは分かるが、中国との違いはよく分からないという若者が増えてしまうだろう。それは台湾の日本語世代が歴史の舞台から去っていくときでもある。そのときを待ち望んでいるのが、中国共産党(習近平)と中国国民党(馬英九総統)の異母兄弟だ。このままでいけば、今のような良好な日台関係が今後とも続く保証は全くないのである。
今年台湾で出版された「漫画・台北高校物語」 旧制高校の勉学・青春模様を活き活きと描いている
李登輝研究の第一人者であるI教授によれば、九十歳を超えた李登輝氏は、持病があり入退院を繰り返している状況だという。だが、依然として矍鑠としており、雑誌「Voice」12月号に『「死」して日台の運命を拓くとき』が掲載されている。
このインタビューではまず「中間層のいない中国の悲劇」が語られ、「2016年の台湾総統選挙」を見通し、「日台は真の”主権在民”を確立せよ」「”武士道”は中国の伝統から脱却する梃子(てこ)」「日本版”台湾関係法”の制定を」などについて触れられている。
台湾の将来については、つぎのようなやりとりが交わされている。インタビューアーは、井尻秀憲・東京外国語大学教授。
井尻 今後、中国と台湾との「両岸関係」はどうなっていくのでしょうか。
李 2016年の台湾総統選挙によって方向が決まるでしょう。いまの馬英九政権は、中国一辺倒の政策をとっています。中国との関係を強め、いわゆるサービス業の貿易協定まで提供しようとしている。…仮に中国からサービス業者がどんどん入ってくると、台湾市場は上から下まで根こそぎ支配されてしまう。
井尻 私もまったく同感です。次の総統選で民進党が勝てなかったら、もう台湾は危ない。「中台統一」という方向に向かう可能性が十分にありますね。
… … …
李 大陸との関係がより密接になる可能性は十分あります。ただし、国民党と民進党以外に、第三グループから人間がでてくるかも知れない。現時点でそれはまだはっきりしません。いずれにせよ、「台湾は中国の一部ではない」ということだけは、はっきりさせておかなければいけない。アメリカは台湾と同じような移民の国ですが、イギリス人は「アメリカはイギリスの一部」などと口にはしない。そう考えれば、「台湾は中国の一部」という中国の論法がいかにおかしいか、よく理解できるでしょう。
《今後の両岸関係はどうなるか?》
専門家によれば、次のような予測が成り立つという。
① 尖閣問題は五年後の日中外相会談で話し合うことで合意ができている。
② 中国共産党は、ほぼ10年後には権力から下野する。それはすなわち、中国の民主化が始まることを意味する。
③ 李登輝氏は次の総統選挙では国民党が勝つと予測している。
④ 国民党の候補として人気が出てきたのが連戦氏の息子。この人は、台湾人意識が強いらしい。
⑤ 台湾人としてのアイデンティティを培う教育が必要だが、10年後では人材がまだ育っていない。10年後に中共が下野するとき、台湾はどうなるのかという問題がある。
⑥ 結局、中国は七つの省からなる連邦共和国になって、そこには台湾、香港が含まれる。台湾には独自の軍隊が維持され、その管理は米中共同で行う。
台湾の国民は、3.11東日本大震災のときに230億円もの義捐金を送ってくれた。一人あたりに換算すると、なんとこれは大陸からの義援金の五百倍に当たる。これほど「親日的」な理由は、戦後の日本人が立派だったからなどでは全くない。台湾人の7割以上を占める本省人の日本語世代(その代表が李登輝氏に他ならないのだが)が、戦前の日本統治時代を肯定的に評価していたからに他ならない。言い換えれば、それほど蒋介石の国民党は、本省人を弾圧したということだ。
「ひとつの中国」という神話に呪縛されたマスメディアは、中国筋の恫喝を恐れて、日本と台湾の歴史的絆については決して報道しない。このままでいけば、台湾が「親日的」なことは分かるが、中国との違いはよく分からないという若者が増えてしまうだろう。それは台湾の日本語世代が歴史の舞台から去っていくときでもある。そのときを待ち望んでいるのが、中国共産党(習近平)と中国国民党(馬英九総統)の異母兄弟だ。このままでいけば、今のような良好な日台関係が今後とも続く保証は全くないのである。
今年台湾で出版された「漫画・台北高校物語」 旧制高校の勉学・青春模様を活き活きと描いている