私の友人・知人には、「正史(まさし)」「青史(せいし)」という名前の人がいる。この語源は、中国の歴史記述の方法に由来している。「正史」(せいし)は言うまでもなく、天下を手中にした王朝が過去を振り返って、王朝の歴史を叙述するものだ。それは史実を客観的に記述するのではなく、権力の正当性を天下に誇示するのが目的だ。
今朝、「産経新聞」を見たら「”日本は自衛戦争” マッカーサー証言 都立高校教材に掲載 贖罪史観に一石」という注目すべき記事が掲載されていた。(下記参照)
1951年米国議会証言の場で、マッカーサー(Douglas MacArthur、1880-1964 元GHQ 最高司令官)が、日本が日米開戦を決断したのは「主に自衛のためだった」と証言した。この史実を都立高校用の副読本に採り上げたというニュースだ。まさに「産経」らしいニュースで、「朝日」の読者には伝わらない。というか、「朝日」の”インテリ”読者は「また、ウヨクの奴らが」としか思わないだろう。
だが、中国史における歴史叙述を例に挙げるまでもなく、「正しい歴史」などというものは金輪際ありえない。「歴史は現在の都合で書き換えられるもの」だからである。この基本認識がないと、不毛な「歴史認識問題」に思考回路を絡め取られてしまう危険がある。
「産経」の記事でもコメントしている渡部昇一氏(上智大学名誉教授)の立場から見れば、日本の近現代史(特に昭和史)は「現在の都合で書き換えられ」た最たるものなのだ。「書き換えた」のは、もちろん戦勝国である米国。東京裁判に基づく「自虐史観」を日本国民に強要し、日本国民に「日本は侵略国家だった」という洗脳を施してきた。この「自虐史観」に都合良く相乗りしてきたのが中国、朝鮮。この史観は、彼らの対日カードの切り札して、今なお有効に使われている。
東京都が都立高校生用副読本にこのマッカーサー証言を掲載したのは結構なことだ。だが、生徒にこの内容を伝えようとしても、現実にはほとんど読まれないのではないかと危惧する。というのも、都立高校の社会科教師の大半は、いわゆる「進歩的文化人」気取りの連中。生徒にこの副読本を読むよう勧める教師が数多くいるとは到底思えない。
教師の中でも歴史(社会科)教師がとりわけ時代遅れ(=愚か)なのは、自らが「他者よりも正しい歴史的真実を知っている」と信じるからだろう。だが、繰り返すまでもなく、「正しい歴史」などあり得るはずもない。一介の教育公務員に過ぎないという等身大の自画像を描けず、生徒・同僚に対してだけ自らの「誇大妄想」を語るというのが、よくある歴史教師の典型なのだ。「職員会議」で延々と「正論」(産経新聞の「正論」ではない。「当局批判」「政府批判」の持論のこと)をブツのは、決まってこういう教師なのだそうだ。
いずれにしても、この度の副読本配布は、贖罪史観の払拭、歴史教育正常化へのささやかな一歩。こう書く私は、知り得た事実を淡々と書いただけ、決して「ネトウヨ」などではないことを明言しておこう。
「日本は自衛戦争」マッカーサー証言 都立高教材に掲載 贖罪史観に一石
2012.3.30 08:11 (1/2ページ)[歴史問題・昭和史]
日本が対米戦争に踏み切った理由について、連合国軍総司令部(GHQ)最高司令官だったマッカーサーが1951(昭和26)年、「主に自衛(安全保障)のためだった」と述べた米議会での証言が、東京都立高校独自の地理歴史教材の平成24年度版に新たに掲載される。日本を侵略国家として裁いた東京裁判を、裁判の実質責任者だったマッカーサー自身が否定したものとして知られる同証言を、公教育の教材が取り上げるのは初めて。
昭和の戦争での日本を「侵略国家だった」と断罪した東京裁判に沿う歴史観は、「日本国民は…政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」で始まる憲法前文にも反映され、「軍隊を持たず」という国際社会でも異質な国家体制の前提となってきた。歴史教育は「贖罪(しょくざい)史観」一辺倒となり、子供たちの愛国心を育んでこなかった。その歴史観が絶対ではないことを示すマッカーサー証言の公教育での教材化は、戦後日本の在り方に一石を投じそうだ。
証言は、朝鮮戦争で国連軍やGHQの司令官職を解任されたマッカーサーが1951年5月3日、米上院軍事外交合同委員会の公聴会に出席し、朝鮮戦争に介入した中国への対処に関する質疑の中で言及。連合国側の経済封鎖で追い詰められた日本が、「主に自衛(安全保障)上の理由から、戦争に走った」と述べた。
都の教材は、この部分の証言を英文のまま掲載し、《この戦争を日本が安全上の必要に迫られて起こしたととらえる意見もある》としている。
教材は、江戸時代以降の日本の歴史を、東京の歩みとともに紹介する『江戸から東京へ』。都教委が都立高校の全生徒に平成23年度から配布している。都民の意見をもとに改訂した24年度版は、全新入生約4万3千人に配布する予定。
『江戸から東京へ』に掲載されたマッカーサー証言については、月刊「正論」5月号(3月31日発売)が詳しく紹介している。
渡部昇一・上智大学名誉教授の話「連合国から東京裁判の全権を委任されたマッカーサー自身が米議会で『日本の自衛戦だった』という趣旨の証言をしたことは、村山談話に象徴されるように東京裁判を背負ったままの日本にとって“超重大”であり、すべての日本人が知るべきことだ」
■村山談話 戦後50年の平成7年8月15日、当時の村山富市首相が発表。わが国が「遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たとし、「痛切な反省の意」「心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明。以後の内閣もこの見解を踏襲してきた。
(「産経新聞」2012.3.30)