東京・西新宿にある
ウイグル料理店「タリム」を経営するウイグル人夫妻が、先日、TVのインタビューに応えて 次のように語っていた。
「今年から、新彊ウイグル自治区では、学校教育で普通話(=北京語)だけが教えられるようになった。これでは、ウイグルの文化が失われてしまうと心配です。」
この夫妻の国籍は、中華人民共和国。日本に留学して、そのまま日本に滞在しているそうだが、多分、故郷であるウイグルに戻るのは難しいのではないか。
昨日、
蘭州で「反日」デモが行われ、200人の高校生が参加と伝えられた。中国各地でのデモは毎日のように報道されているが、そのすべては漢族による「反日」デモであり、少数民族地域の「反政府」デモについては、全く報道されない。
そんななか、昨日の「産経新聞」で伝えられたのは「チベット族デモ」のニュース。チベット族に対する普通話(=北京語)の強制に対して抗議するデモだったようだ。「産経新聞」は、英国BBCの報道を下敷きにして、このニュースを伝えたが、おそらく他の新聞では報じられていないだろう。このニュースが漢族による「反日」デモに劣らず重要だと思われるのは、中共政府が少数民族の言語・文化まで収奪しようとしていることだ。新彊ウイグル、内モンゴル、チベットでも、各民族固有の言語文化が奪われ、少数民族の漢族化がいっそう進められているという事実だ。
ここで思い起こしたいのは、「
ひとつの中国」という概念は、清朝の最大版図をそのまま「中華民国」が引き継いだことから始まった、虚構の概念であることだ。英国BBCがチベット問題をきちんと報じるのは、清朝が瓦解したとき、英国がチベット独立を承認していたという歴史的経緯があるからだ。
連日の「反日」デモに対して、一喜一憂の報道を繰り返す、日本のマスメディアは、もっと歴史に目を向けて、「中国はひとつ」という虚構から再検討すべきだろう。
さらに言えば、
この「中国はひとつ」という虚構こそが、中華世界に住む人々に不幸と災厄をもたらしてきた元凶なのである。
チベット族デモも拡大 中国語教育の強制に反発
産経新聞 10月24日(日)21時11分配信
【北京=川越一】反日デモが続く中国で、少数民族による政府への抗議デモも広がりをみせている。中国語による授業を義務づける教育改革に対しチベット族が反発し、青海省チベット族居住区で火がついた学生による抗議行動が首都北京にも飛び火した。民族同化をもくろむ当局のいき過ぎた教育改革が、漢族への不信感を増幅させている。
チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部・ロンドン)によると、青海省黄南チベット族自治州同仁県で19日、民族学校の高校生ら5千人以上がデモ行進し、「民族、言語の平等」を訴えた。20日には同省海南チベット族自治州共和県で学生が街頭に繰り出し、「チベット語を使う自由」を要求。22日には、北京の中央民族大学でも学生がデモを敢行した。
英BBCによると、24日には黄南チベット族自治州尖扎県で民族学校の生徒に教師も加勢し、総勢千人以上が教育改革の撤回を求めてデモを強行、治安部隊が出動する事態に発展した。
発端は9月下旬、青海省が省内の民族学校に、チベット語と英語以外の全教科で中国語(標準語)による授業を行うよう通達したことだった。教科書も中国語で表記する徹底ぶりで、小学校も対象という。
当局の中国語教育の強化の背景には、中国語が話せないため職に就けないチベット族が少なくないという現状がある。就職難はチベット族と漢族の格差をさらに広げ、それがチベット族の当局に対する不満につながっているのも事実だ。
しかし、2008年3月、チベット自治区ラサで発生したチベット仏教の僧侶らによる大規模騒乱が示すように、中央政府のチベット政策に対するチベット族の不満、漢族に向けられる嫌悪感は根強い。
今回の教育改革も、チベット族学生の目には「漢族文化の押しつけ」「民族同化の強要」と映っているようだ。「自由チベット」は中国当局がチベット語の“抹殺”を図っていると主張している。
同省共産党委員会の強衛書記は21日、黄南チベット族自治州で学生代表と座談会を開き、「学生たちの願いは十分尊重する」と約束した。中国当局が反日デモ同様、教育改革に対するチベット族の抗議デモが、体制批判に転じることについて懸念している状況をうかがわせる。