マントヴァーニ楽団の最新DVD「Music from the Movies」が英国の友人から送られてきた。
このDVDは、1958年BBCが制作したTV番組「マントヴァーニ・ショウ」(Mantovani Show)から「Salute to the Stars」「Film Encores」「Silver Screen」と題された三週分を抜粋したもの。「マントヴァーニ・ショウ」は週一回の30分番組で、30回分以上が制作された。だが、16mmフィルムで撮影された映像は、多くが散逸してしまい、このDVDに収録された三週分も2013年になってようやく発見されたものだという。
内容は次のとおり。
「Salute to the Stars」
1 Let me be loved
2 セプテンバー・ソング September Song ~ 唄)ジョン・コンテ John Conte
3 四月の恋 April Love
4 ドンキー・セレナーデ Donkey Serenade
5 三つの恋の物語 ~ ピアノ)Monia Liter (モニア・リター)
6 As time goes by ~ 唄)ペトゥラ・クラーク Petula Clark
7 エル・チョクロ El choclo
「Film Encores」(フィルム・アンコール)
1 ハイ・リリ・ハイロー Hi Lili Hilo
2 間奏曲 Intermezzo
3 Falling in love is wonderful ~ 唄)ヴァネッサ・リー Vanessa Lee-
4 Our Love Affair
5 アンチェインド・メロディ Unchained Melody
6 クワイ河マーチ Colonel Bogey March ~ 演奏)The Band of her Majesty’s Welsh Guards
7 ハイ・ヌーン High Noon
「Silver Screen」(シルバー・スクリーン 銀幕)
1 ラ・クカラチャ La Cucaracha
2 星に願いを When you wish upon a star
3 ブルー・スカイ Blue Skies ~ 唄) ドロシー・コリンズ Dorothy Collins
4 ある微笑 A Certain Smile
5 ラ・ロンド Le Ronde
6 虹の彼方に Over the Rainbow~ 唄) ドロシー・コリンズ Dorothy Collins
7 ワルソー・コンチェルト Warsaw Concerto ピアノ) Monia Liter
DVDの冒頭には、マントヴァーニの伝記を執筆したコリン・マッケンジー Colin MacKenzie、英国The Magic of Mantovani Orchestraの打楽器奏者であるポール・バレット Paul Barrettなど、マントヴァーニにゆかりのある人々のコメントが添えられているのも嬉しい。
「ダウンタウン」を唄って一世を風靡したペトゥラ・クラークが、ハンフリー・ボガードに捧げる(salute)という「As time goes by」(時の過ぎゆくまま)は、このDVDでなければあり得ない、マントヴァーニ楽団の伴奏という豪華さ。
二週にわたって「三つの恋の物語」「ワルソー・コンチェルト」を弾いたピアニスト・モニア・リターの演奏は、まさにピアノ協奏曲のおもむきだ。
"As time goes by"を唄う ペトゥラ・クラーク
マントヴァーニが指揮する楽団演奏では、「星に願いを When you wish upon a star」が印象に残った。この曲は、彼のトレードマークである「カスケーディング・ストリングス」を存分に取り入れていて、弦が高音部から最低音部まで滑り落ちていく音像が特徴的。以前、頻繁に来日していた、マエストロ亡きあとの「マントヴァーニ楽団」(The Mantovani Orchestra)が録音したこの曲は、このカスケーディング・ストリングスの部分をすっぽり省いてしまっていた。察するに、この部分は音あわせがかなり難しいのではないかと思った。マントヴァーニ自身が指揮する演奏は、さすがに立派で申し分ない。
オリジナルである16mmフィルムの保存状態が悪かったためか、DVDの音質はお世辞にもいいとは言えない。だが、貴重な映像がDVD化され、後世に引き継がれたという点で、極めて大きな意義がある。
多くの方々に見ていただきたい映像だが、英国盤(PAL方式)なので、再生可能なDVDプレーヤは限られそうだ。しかし、少なくとも、パソコンでは再生できるはずなので、興味があるかたはぜひ…。