昨日(10月29日)、日本と台湾で同時に「NHKのど自慢in台湾」というTV番組が放送された。土曜日の夜という時間帯だったので、見逃した人が多いかも知れない。
NHKはこの番組の事前PRに熱心で、番組表を見る限りでは、3分間くらいに編集されたPR映像を4~5回は流したようだ。
「媚中」報道で知られるNHKが、何故いま、台湾にこだわるのか。まず考えられるのが、台湾人が「東日本大震災」に対して230億円もの支援金を送ってくれたことだ。この金額は、一人あたりの金額で比較すると、中国人の500倍にもなる。中国や韓国がおざなりの「同情」を示したのに対し、台湾からの支援は、物心ともに温かいものだった。多くのマスメディアは、中国に「遠慮」して、台湾からの支援を報道しなかったが、人の耳を塞ぐことはできない。いつのまにか、台湾からの支援は、広く日本中に知れ渡っていった。講談社の女性月刊誌「FRAU」が「ありがとう 台湾!」特集(8月号)を組んだのも、そのひとつの表れだった。
「NHKのど自慢in台湾」をつぶさに見ると、台湾人がいかに日本に関心を持っているかよく分かる。関心といっても、正確に言えば、温かい眼差しと言うべきだろう。
84歳の台湾人女性が古い日本の歌を歌った。正確な日本語の発音で、歌い終わったあとの会話も日本人と何ら遜色はなかった。この老人に対して、司会者であるNHKのアナウンサーは、「お上手な日本語ですね」とさらりと言っただけ。だが、考えてみれば、この人は外国語として日本語を学んだのではない。日本統治時代の台湾で日本語教育を受けた世代なのだ。視聴者に対して「台湾は50年間日本だった」という史実を何故、きちんと伝えないのかもどかしく思ったのは、私だけなのか?
上述の「東日本大震災」への支援については、NHKアナウンサーは、自らはっきりと事実を述べることなく、のど自慢参加者の日本人女性二人組に「ありがとう 台湾」と語らせたにとどまった。やはり「中国筋」の目を気にしているのだろうかと思った。
幕間には、タイヤル族の小学校「金岳(きんたけ)小学校舞踊隊」による民族舞踊が披露された。トロピカルな雰囲気を漂わせる素朴な踊りを見て、「ああ、台湾は台湾なんだ」と感じた人も多かったはず。のど自慢の参加者には、アミ族の兄妹もいたので、さらにその思いを強めた。
「NHKのど自慢」がブラジルやカリフォルニアの日系人相手に開催されたことはあったのだろうが、このように現地の人が大勢参加して開かれるのは前代未聞だろう。台湾は、まさに世界一の「親日国」なのだ。
一方、中国はいま、台湾の日本語世代がいなくなる日を心待ちしている。台湾併合への道をさらに拓こうとしているのだ。台湾人がいまなお「親日的」である理由はただひとつ。日本語世代である祖父母が、孫達に”日本はいい””日本時代はよかった”と語り継いだからだという。蒋介石政権は、日本語使用を禁止するなど反日教育を進めたが、中国共産党のように個々の人間を「洗脳」し「思想改造」することまでは出来なかった。それ故、李登輝氏が登場し、台湾が民主化された20年前から、それまで潜在していた「親日感情」が一気に噴出したのだ。
「NHKのど自慢in台湾」は、図らずも「台湾は中国の一部ではない」ことを十分に視聴者に伝えたのではないか。NHKのアナウンサーは、「ひとつの中国論」に加担して、台北が「中華民国の首都」であることさえ言わず、「台湾の台北」と言っただけだったが、視聴者はそんな姑息さを飛び越して、「台湾は台湾だ」と感じたのではないだろうか。
NHKは「アジアの”一等国”」(2009.4.5放送)で
日本と台湾の”絆”を断ち切ろうと試みた。