さも重厚な歴史番組のようだが、実はそうではない。何故、NHKが今頃こんなテーマの番組を作ったのか、下記の産経新聞記事を読めば容易に了解できる。「中台合作」を進める中国では、抗日の「国民党兵士」でさえ、民族の英雄だとして賞賛され始めたのだ。「反日」を強調して「中華民族」の団結を謳う。これは台湾の国民党支持者に対する懐柔策なのだが、NHKはこの中国の方針に忠実に従って、こういうTV番組を作成したのだろうか。 NHKは、この番組について次のように紹介している。まるで中共政権の御用放送局であるかのようなこの説明を看過するわけにはいかない。
「近年、中国と台湾の関係改善が模索されるなか、改革開放後に育った若い世代を中心に自らの国の歴史を見つめる機運が高まり、忘れられていた“抗日老兵”が注目されるようになりました。若者たちは「自らの目で歴史を見直そう」とインターネットを使い、それまで未知の存在だった“抗日老兵”の情報を集め、老兵に経済的援助を呼びかけるとともに、聞き取り調査を繰り広げています。」
この説明では、若者達が自発的に「自らの目で歴史を見直そう」しているそうだが、NHKは何故こうした「気運」が盛り上がっているのかを分析さえしていない。中共一党独裁政権のもとでは言論の自由などないのだから、こうした「気運」の裏に何があるのか考えるのがジャーナリストの使命というものだろう。中台交流には、「反日」意識の醸成が必要だと中共当局が考えるのは、私にさえ分かることなのだ。
「アジアの”一等国”」問題で明らかなように、NHKは放送内規に、①日本と台湾の歴史的絆には触れない(触れるとすれば、日本軍国主義批判に限定する)、②中国はひとつであり、台湾は中国の一部であると謳っていると思われる。
興味のある方は、注意深く見て欲しい。
※ http://<WBR>www.nhk<WBR>.or.jp/<WBR>bs/hvsp<WBR>/
【NHKの番組紹介から抜粋】
ハイビジョン特集 歴史から消された兵士たち ~中国「抗日老兵」の歳月~
BShi 6月5日(土) 午後8:30~10:00
太平洋戦争末期の1944年、連合軍の中国部隊・蒋介石率いる国民党軍が、北部ビルマでの戦いで激戦の末に日本軍を破りました。その後、国共内戦を経て中華人民共和国が成立すると、抗日戦争は八路軍の功績とされ、ビルマ戦線で勝利した国民党軍の存在は歴史から抹消されてしまいました。近年、中国と台湾の関係改善が模索されるなか、改革開放後に育った若い世代を中心に自らの国の歴史を見つめる機運が高まり、忘れられていた“抗日老兵”が注目されるようになりました。
若者たちは「自らの目で歴史を見直そう」とインターネットを使い、それまで未知の存在だった“抗日老兵”の情報を集め、老兵に経済的援助を呼びかけるとともに、聞き取り調査を繰り広げています。
老兵が体験した戦争と戦後とはどのようなものだったのか。若者たちは、老兵の言葉から何を学ぼうとしているのか。若者たちと老兵との対話を通じて、知られざる中国現代史の一面を掘り起こします。
【産経新聞2009.12.30付】
南京にまた抗日記念館 国民党軍の“功績”に異例の評価
中国空軍駆逐司令との肩書の高志航の銅像の胸と帽子の徽章には国民党の党章「青天白日」がくっきり(河崎真澄撮影) 中国江蘇省の南京市で南京大虐殺記念館の大幅拡張に続き、抗日戦で戦死したパイロットらをまつる「南京抗日航空烈士記念館」が新たに開館した。1937年に始まった日中戦争で中国共産党と中国国民党が共闘した「第2次国共合作」を意識し、蒋介石が率いた国民党軍の兵士の犠牲を悼む展示が目立つ。中台急接近を反映してか、国民党の党章や中華民国時代の国旗も資料として展示するなど、抗日における国民党の“功績”を評価する異例の記念館になっている。(南京 河崎真澄)
記念館は江蘇省と南京市が内外から寄付を集め、総工費4千万元(約5億2千万円)をかけて今年9月に開館した。孫文の墓地「中山陵」がある市内の紫金山の北側で、約4千平方メートルの敷地に4つの展示室と野外展示施設をもつ。航空烈士共同墓地と合わせて「国際抗日航空烈士公園」と名付けている。
49年の新中国成立以前の中華民国時代に起きた日中戦争時の「空の犠牲者」をまつる中で、国民党兵の戦死者を多数展示している。野外展示には、中国に飛来した日本軍機を初撃墜したという中国空軍駆逐司令との肩書の高志航の銅像が建てられているが、銅像の軍服や帽子には国民党章の「青天白日」がくっきり刻まれていた。
また、日本軍との空中戦で戦死した国民党軍パイロット林木鎮の写真や軍人手帳に添えて、国民政府主席の蒋中正(介石)の印が押された「栄哀(追悼)状」も展示されている。中国ではタブー視されていた中華民国の国旗である「青天白日満地紅旗」も飾るなど、国共合作時代の再来をイメージさせる異例の展示だ。
記念館の係員によると国民党関係者もすでに参観に訪れているという。南京は中華民国が首都を置いた歴史もあり、共産党が国民党との新たなパイプ作りを進める環境が整ってきた。
このほかにも、中国を支援した米義勇軍のフライングタイガーや旧ソ連軍兵士の戦死者もまつっており、「中国で初めての国際的な抗日航空烈士記念館」(人民日報)を標榜(ひようぼう)している。2007年12月に改修を終えた南京大虐殺記念館のような残虐なシーンはないが、市民や子供にも抗日をキーワードにした“国際包囲網”をわかりやすく伝える新たな反日教育の場になっていた。
中国が今後、南京を舞台に「反日宣伝」の場を一段と広げる懸念もある。