the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 

  




GITANES嗜好者の頃に出会ったことが
隔世感を醸し出している。
それとは無関係に・・・。


「帝王」と名乗る人物は数え切れないほどいるだろうが、
「帝王と称される」人物はそれほどいない。

私の中では、その称号を与えられた(現代の)人物は3人おり

マイルスデイビス
ジャックニクラウス
そして、
モデルのT氏である。

マイルスはジャズの、二クラウスはゴルフ界の、
そしてT氏は「ブライダルの帝王」と称される。

私が自分を称して
「長屋の貴公子」
とか
「南海の大魔王」と言っているのは文字通り自称であり
勝手にそう言っているだけなのだが、
彼らは違う。

T氏の、ブライダルの帝王という称号を耳にしたのは
彼の口からではない。

若い女性モデルと話しをしていたときに、たまたまT氏の
名前が出て、
「Tちゃん知ってる?」と尋ねたら、
「ええ、『ブライダルの帝王』でしょ?」とさらっと返事が
返ってきたのが最初である。

さまざまなキャラクターやシチュエーションを表現してきた
だろうが、とりわけブライダルショーでその真価を発揮
していたのだろうと推察される。


私が勤務する会社は、多くの宣伝材料で彼を起用した写真を
使っている。
トータルではもう15年以上になるはずだ。
何社かの共同販促制作の時期を経て、自社単独の仕事に
なってからも彼を起用し、もう結構な月日になる。


現場でのリクエストに対するレスポンスも速く、正確で、
合間のバカ話にも付き合ってくれる。
当然仕事のクオリティとして、こちらが要求する水準・
容姿・資質・演出力~を備えているので(備えているからこそ
起用し続けるのだが)、現場でも、画像が納品されて以降の
作業の段階でも、非常に仕事がし易いモデルである。
スーツ、そしてさすがにフォーマルウェアを着てスタジオに
スタンバイする彼の姿は、「ブライダルの帝王」にふさわしい空気
を漂わせ、クライアントの責任者である「南海の大魔王」
(私のことだけど)との凄まじい戦いが繰り広げられていた
(と私だけは思っている)。



そのT氏から電話が入った。
モデルを辞めるとの知らせだった。

ウェブデザイナー・制作という別の顔を持っていた彼は、
そちらに専念することに決めたらしい。
年齢は私より下なのだから、まだまだモデルとしてバリバリ
やっていけるに違いないのだが、決心は固いとのこと。
副業でも、モデルをやっていくつもりは現時点で全くないらしい。


モデルの世界で生きていて、そしてそれでメシを食っていけている
人達はおそらく、美しいものとは・美しいこととは
何であるのか という線を、普通の人より明確に持っている
のだろう。そうでなければやっていけない。人形でない限り。

そして、彼がまだまだ余力を残しつつ一線を退く決意をしたというのは
我々には推し量れないT氏の美学がそうさせるのだろう。
線の引き方が粋に感じるではないか。


「まあ電話で『じゃあお世話になったね』というのも寂しいから
近々会おうか。」ということになり、近日中にお会いできるのだが、
今までの話もさることながら、ぜひこれから将来のことを色々
尋ねてみたいし、話してみたい気がする。

なにしろ
彼とのこれまでの付き合いは10年ほどであり、
ということは、これから死ぬまでの付き合いの方が
ずっとずっと長いのである。



しかし、彼を凌駕するほどのモデルさんと今から出会わなければ
ならないというのは、
なんと難儀なことか。




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