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それとは無関係に・・・。
 





GITANESが必携品になる、もっと以前の話。
それとは無関係に・・・。

記憶を辿っていくと、どうも私は子供の頃にはもう
コート姿というものに憧れを持っていたように思う。

親父も長年ベージュのステンカラーや紺のトレンチを愛用していた。
その影響もあるかもしれない。
コートは、子供にはほぼ縁のないアイテムだったから
「いつかはあんなのを着てみたい」と思っていたのだろう。

高校生の頃初めて紺のステンカラーコートを買った。
なかなかしっかりした生地で長持ちした。
成人してからもしばらく来ていたし、その後は兄が着ていた。
洋服には年齢を重ねるごとにどんどん無頓着になっていった兄には
少々ヨレてきたそのコートが似合っていたと思う。

このコートは冬の防寒という用途よりも、
もう少し暖かくなってきた頃に、シャツ一枚の上に羽織るスタイルが気に入っていた。
その恰好で電車、自転車、原付に乗り、どこへでも行った。
できればカバンは持ちたくないのは今も当時も変わらない。
必携品は全てポケットに入れた。
といっても、ほとんど何も持っていなかった。
あんまり現金が入っていないけど、現金しか入っていない財布と、文庫本。たまに菓子パン。
携帯電話なんてものは存在しなかったし、GITANESとライターが加わるのはもう少し後のことだ。


川沿いに置かれたベンチに腰掛けたり、お城の公園に行き座る場所を見つけ
菓子パンをかじり、
文庫本を引っ張り出して読む。
その時間中に、誰かが自分に用があっても、自分が誰かに用があっても
ケータイも、もちろんスマホもない訳で、簡単に連絡は取れなかった。
だからとてもいい時代だった。外で本を読むことを邪魔されることがなかった。

どうして文庫本なのか?
こたえはシンプルで、叢書や単行本は大きすぎて重すぎて
ポケットに入らない。
そしてもう一つの、最大の理由は「文庫しか買えない」からだった。
学生だからそれを恥じてもいなかったが、
「コートのポケットが小さいヤツのために、文庫本は存在するのだ」と嘯いていた。

今でも基本的に、外出先での待ち時間・移動時間は

スマホではなくて文庫本である。
今では単行本を買うぐらいの金はあるが、携行と言うと文庫に限る。


日が傾き始めて、あたりが寒くなってくると
またポケットに文庫本を放り込み移動する。
家に帰ろうか、友達のところに立ち寄ろうか。
まだまだ時間は無限にあるような気がしていた。

あのころ、どんな本を読んでいたのか
もう忘れてしまって久しい。



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