GITANESの短さが短い妄想を呼ぶ。
それとは無関係に・・・。
富士山五合目駐車場までPを追いかけるのは即座に諦めた私は、
図書館で本を読む気分でもないのですぐにそこを出た。
年末だというのに暖かく、どうも調子が狂う。
この陽気だと、わがボロアパートの室内よりも戸外の方が
暖かいのではないだろうか。
まっすぐアパートに帰らず、左に折れて商店街へ向かう。
「揚げ物屋」のコロッケを何個か買い込み昼飯の代わりにしよう。
小さいながらもなかなか充実したその商店街を私は気に入っている。
大きいスーパーと、併設のショッピングモールも近くに
あるが、どうも広すぎていけない。
あのショッピングモールじゃあコロッケを買うためにどれだけ
歩かされることか。歩くのは嫌いではないが、歩かされるのは
大嫌いなのである。
「あ、オーヤさん、コンチハ。」
入居者の一人、怪しげな西洋人ジャック・ハリスンが
寝具屋の中から声をかけてきた。
「あ、ジャックさん。布団買うの?」
「イヤイヤ、びじねすダヨ。コノ店ワタシノお客サマ。」
「何の?」
「ダカラびじねすヨ。」
といいつつジャックはウィンクをしたつもりだろうが、
両目をつぶってしまうからウィンクにはなっていなかった。
器用そうで不器用な西洋人だ。
どんなビジネスをしているのか詮索するのは今日も諦めた。
もうずっと怪しげジャックでいいではないか。
「マタころっけ買ウんダロ?」
「買うよ。」
「急ガナイト、交雑牛ころっけナクナルヨ!」
片言のくせに「交雑牛」という言葉は知っているらしい。
もちろんそんな商品名で売られてはいないが、和牛とかなんとか
こだわりの表示がないんだから「アレハ交雑牛ヨ!キット!」
とジャックは言い張る。きっと交雑牛という呼び方が気に入って
るんだろう。「最初は乱交シテル牛かと思ッタヨ!」
とそこそこ大きな声で言っていた。
たしかに、夜が乱れていそうな表現ではあるが
そんな訳ないだろう。
「ジャック一応訊くが、この写真の人物知らない?」
「ン・・・知ラナイね。コノ女子ガ交雑シテルノカ?」
訊いて損した。
「じゃあまた。」
「何でも売ってる店」の店頭にぶら下がったスリッパが気になる。
通り過ぎたのをわざわざちょっと引き返し、そのスリッパ270円
を買った。右が緑、左がオレンジのスリッパは製作意図が
まったくわからないものの、何か惹かれるものがあったのだ。
帰宅後
どうしてそのスリッパに惹かれたのか改めて考えたのだが、
皆目わからず仕舞いで諦めた。
牛コロッケはやっぱり美味かったが蟹クリームコロッケには
もちろん蟹の肉などはいっておらず、おまけに蟹の味も匂いも
しなかった。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
なかなか物語はすすまないのである。