いつかはしなくてはいけない・・・と、思っていた墓じまいをした。
仕舞うべき墓は二基ある。
一基は戦没者の墓。
親戚の墓だが縁あって私が管理していた。
墓の主は昭和20年1月サンジャック沖で戦死。
サンジャック沖ってどこだろう?
南号作戦に参加していたのだろうか?
墓は戦没者の墓ばかり10基程並んでいる。
その中の一基を片づける。
墓の主とはもちろん私は会った事もない。
結婚もせず、赤紙1枚で招集され、遠い国で戦死。
遺骨はなく、親の元へ届いた箱に一つ石が入っていただけだったと聞いていた。
甕が納められていた。
石はない。
紙が炭化したようなものと土くれだけ。
そっとそれらをすくい持ち帰る。
おそらくここに並ぶ他の戦没者の墓にも同じような甕が納められているでしょう。
歯が抜けたような感じになったが、きれいに仕上げてもらった。
もう一基は実家の墓。
三姉妹の我々、この墓を託す者はいない。
父親の遺骨が愛用していた茶道の棗に入れられていたのには驚いた。
こういう風流な納骨もあるんだと、納めた妹に感心した。
取り出した遺骨を納め替える事はしない。
それをするには、墓地の管理者に証明をもらい、受け渡す寺でも証明をもらって役所へ行き、
やっと改葬許可が出て、それを持って受け渡す寺へ行く。
たいそう面倒。
遺骨の処理は私に任せてもらった。
改葬しないので、思ったほど費用はかからなかった。
墓の性根抜きを依頼したお寺さんへのお布施。
石材屋へ二基で15万円程。
一つ肩の荷が下りた。