歌舞伎座で「四月大歌舞伎」を観た。
今年1月以来の歌舞伎座で、私の好きな「二階真ん中」の席に腰を下ろす。この席だと花道は見え難いが、舞台の奥行きを見るにはとても良い席である。
一幕目「彦山権現誓助劔」では仁左衛門の舞台映えする色男ぶりにとにかく惚れ惚れしてしまう。いい人にもほどがある六助の怒りが最大の見どころである。
二幕目「幻想神空海」は夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を舞台化したもので、留学先である唐での若き日の空海(染五郎)と橘逸勢(松也)が元気に舞台で躍動し、愛之助の結婚記者会見をアドリブに入れていた。とにかく舞台の展開が素晴らしい約二時間で、昨年高野山に行ったこともあり、思い入れもひとしおであった。
一、彦山権現誓助劔(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
杉坂墓所
毛谷村
師匠の仇討に奮起する純朴な若者と男勝りの許嫁
百姓ながらも剣術の名人の六助が、杉坂墓所で母の墓参りをしていると、通りかかった浪人微塵弾正から、母への孝行のため仕官したいと聞きます。六助はその心にうたれ、御前試合で勝ちを譲る約束をします。
数日後、弾正との試合が行われ、六助は約束通り負けてやります。そこへ謎の虚無僧が現れ、突然六助に斬りかかります。実は、この虚無僧は、六助の剣術の師、吉岡一味斎の娘で、許嫁のお園でした。お園から、一味斎が京極内匠という悪人に討たれたことを知らされたうえ、先程試合をした弾正こそ仇の京極内匠とわかった六助は…。
魅力あふれる義太夫狂言の名作をご覧にいれます。
二、幻想神空海(げんそうしんくうかい)
人智を超えた様々な人物が織りなす夢枕獏原作の新作歌舞伎
ここは唐の国。倭国よりの留学僧空海と儒学生の橘逸勢は、ある日訪れた妓楼で妖物に憑りつかれた男と鉢合わせし、空海は男から憑き物を取り除いてやります。実は男の家は人間の言葉を話す化け猫に憑りつかれ、妻は化け猫に寝取られてしまったとの事。空海は化け猫のもとへと向かいますが、そこから唐王朝の秘事に係る事件に巻き込まれていきます。事件を追う空海と逸勢は、50年前に楊貴妃が死んだことにつながりがあることをつきとめますが…。
空海と橘逸勢の二人が繰り広げる不思議な世界にご期待ください。