エスポワール(その1)
野菜を通じて知り合った、知人が栃尾に洋食屋を開店する事になり招待された。
開店日にあらかじめ準備した花束を持って、夫婦そろって自動車で出かけた。
内心、新規開店の店の料理でワインを飲み、帰りは妻の運転でと考え、
さりげなく切り出すと何と幸せな事、あっさりと引き受けてくれたのだった。
しかし、国道252号線から県道57号線に分かれ、峠に向かうにつれ、カーブ、
急勾配が連続し、それどころか工事中で片側交互交通の悪路さえあるではないか。
作戦の間違いに気付いた。いくらワインで酔っても、この悪路では素面で有っても、
妻の多少心もとない運転では安心して乗っていられるものではないと。
仕方なく、作戦変更。「とても、この道では夜の運転は任せられないから、
俺が運転する。代わりに飲んでも良いよ」と通告した。
欣喜雀躍とまでは行かないけれど、喜んだ家内はワインを美味しそうに飲む。
いえ、酒飲みの私だって、飲む人と素面の付き合いだって平気で出来る。
ノンアルのビールで美味しい御馳走を食べた。
機嫌の良くなった家内はもう一組の招待客に話しかけ始めた。
そのお客さんは若い夫婦と中学生ほどの娘さんと言う家族だった。
(続く)