夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

山本一力著「大川わたり」祥伝社文庫

2006-12-01 16:39:01 | 本と雑誌

山本一力著「大川わたり」祥伝社文庫
博打の借金二十両 耳揃えて返すまでは 大川を渡ることは許さねぇ

銀次は度胸をつける為 大工の仕事で知った先生に剣術を習う

その先生の勧めで呉服屋の手代として頑張るが 彼に勝手な恨みもつ新三郎や 同じ手代の企みにかかり

銀次はなんと幸せな男だろうか

かつて自分の猫の為に命を落とした銀次郎を銀次に重ね 内心手のかかる息子の成長を待つような心持ちの猪之介

銀次の中の良い部分を見守る堀先生

呉服屋の主人 太兵衛

三人の大きな人間に守られている

著者が生まれて初めて書き上げた長編が この「大川わたり」の原形だと

成長した銀次や千代屋を 著者の他の作品で 出会えないかと 楽しみにしながら


山本一力著「深川駕籠」祥伝社文庫

2006-12-01 10:04:30 | 本と雑誌

山本一力著「深川駕籠」祥伝社文庫
両替商の長男でありながら勘当を受け臥煙(がえん)となり三番纏をあげていた新太郎は 事故をきっかけに 臥煙が続けられなくなり 尚平という相肩を得て ひょんなことから駕籠かきに

男の意地と友情と やせ我慢の較べあい

損料屋喜八郎も出てまいります

こいつら この後どうねったい?

更に続きが知りたくなる 心に熱い短編連作集

「お神酒徳利」が出て小説NONに続きが連載され シリーズ化しているそうです

書店へ行かねば!


「夜の恋」

2006-12-01 00:59:02 | 自作の小説

12で売られた美鈴は体が大きかった事もあり すぐ店に出されることとなった

その店には他の店にない手順があった

初めての娘を ご隠居に試してもらうのだが まったくの生娘は老人相手は怯える

そこで慎之介の出番となる 彼は抱かれ方を指南するのだ

勿論破爪はしない

彼は立たない

女遊びが過ぎたのか 原因は分からないがダメになってしまっている

しかし過去の女遊びで どうやれば女が悦ぶか知り尽くしていた

どうにかしてくれ!と女が思うほど ただただ快感を与え続け 男に抱かれるのが悪いものでない事を 女の体に教える 覚えさせる

「そうよ 触ってみねい 自分に そうして濡らしておかねぃと辛いぜ」

客を悦ばせたら いい思いをさせてやったら てめぇが楽になるのよ 適度に突き放し それでも優しく女に教える 「客がみんな ここまでするとはかぎらねぇ だから てめえで支度しておくのよ」

お仕込みのせいで ご隠居は いたく美鈴が気にいり そのまま身請けの運びとなった

それから十年 ご隠居は死んだ

美鈴は三味線と踊りを身につけ

ご隠居から住む家と家賃の上る長屋を遺された

自由の身となった美鈴は 慎之介の行方を確かめた

十年の間に慎之介は店を離れ 夜泣き蕎麦の屋台をひくようになっていた

この薄倖の娘は 十年 ずっと慎之介を想ってきた

老人に触れられる時 これは慎之介なのだと思い込むことで 耐えてきた

汚れ切った体だけど いつかもう一度逢えるなら!

たった一つの夢

小雨が降り始め 今夜はこれまでだなと 慎之介は 空を見上げる 「お蕎麦いただきたいのですが」

若い女の声に 黙ったまま 慎之介は支度をする 「つっ立ってねぇで座んねぃ」

黙って蕎麦を食べ終わった美鈴は 早口で つっかえながら 思い切ったように尋ねた

「どうして お店やめたんです」

「おめぃ・・・」 慎之介は 呆れた顔で 客を眺め直した

「ふ・・・ん たっちゃいけねぇ商売が たつようになっちまった それだけの事さ」

夜泣き蕎麦屋を勝手に美鈴は手伝うようになり

半年後 押しかけ手伝いの美鈴に押される形で 慎之介はめし屋を開く

押しかけ手伝いは やがて押しかけ女房となり

その頃には めし屋は安くてうまい評判をとるように なっていた

「よりにもよって俺なんざを―」

「怖くてしかたなかった・・・知らないお年寄りに体をいじられることが あたし なんにも知らなかったンですもの

慎さんのおかげで それが怖いもンじゃないと 教えてもらって やり過ごし方も 覚悟もできました

あたしにとっちゃ慎さんは恩人なんです」

「おめぇ・・・」

ひどく変わった形の出会い方ではあったけれど 慎之介は美鈴の初恋の相手であったのだ