「ちっちゃなかみさん」 三代続いた料理屋 向島の笹屋の一人娘お京 彼女が好きな見込んだ男は 担ぎ売りの信吉 彼は姉の子二人(お加代と治助)育てており その父親が堅気じゃないので お店に迷惑かかっては―と 話を断る 夜堪え切れず泣くほど 夢で呼ぶほど お京が好きでありながら
幼いながら叔父の苦しさを思う加代は治助を連れ せんに長屋へ訪ねてくれたお京の両親に頼む
自分達がいなくなるから叔父を お嬢さんと一緒にさせて下さい
話を聞いたお京の両親は ちっちゃなかみさんと呼ばれるお加代のいじらしさに
お京の代わりに 加代と治助を貰いましょう まだまだ子供の一人や二人育てられますよ
―久しぶりにいきいきしている妻に 嘉平は若やいだ気分になった―
あたたかな本当に良い物語です 私はこの話が大好きです
「邪魔っけ」早くに母が死に 幼い弟妹の為に懸命に母親代わりをこなし働きつめできたのに
上がいかないから あたし達みんな変になるのよ 大嫌い と言われる
生まれ育った店を追い出された長太郎は そんなおこうの言葉が胸に応え 生まれ直そうと思う 生きていくのに必要な女
長太郎により おこうも救われるのだった
八方丸くおさまるのだけど 弟妹達は誰のせいで 姉がいきおくれになったのか 感謝が足りないわ! と思うのでした
「お比佐とよめさん」 両親が早くに死んで 弟が良い家のお嬢さんを嫁に貰う ―それが夢だったのに
弟の好きな人は 過去のある女性
お比佐は それが許せず 酒を飲み・・・ 事件は起きる
「親なし子なし」 三河屋の嫁になりはしたが 姑からも夫からも人間らしい扱いをされず 前の夫の連れ子は 育てた志乃から金をむしりとろうとし 更には犯そうとまでし 幼馴染みの幸吉に刺される
同心 三枝のはからいが あたたかい
つんとくるあたたかさ しみじみと
「なんでも八文」 家つき娘は我が儘に暮らすうち孤立していく 馬鹿にしてきた相手にあわれまれる人間になってしまっていた 報いといえば報いですが ちょって残酷な話かもしれません
「かみなり」 冷たく勝手な男は 呆れられ妻子に去られる 一人になった男は 事情ありの身寄りない赤子を可愛がるようになるのだが
「遺り櫛」 はなからの役目とはいえ 夫を罪人とした妻 ひと言いたくてやってきた女の素姓は実は― 浅はかな嫉妬が得難い幸福を 醜く崩壊させてしまった
「赤絵獅子」 男が自分の素姓を知った時 それは死にもつながっていた
有田焼を巡る 加賀の隠密
遺された妻子の旅は哀しい
「女ぶり」 実在の人物の若き日
男を恨み 武士へ反感を持つ女は娘の父の名を 誰にも言わない
粒揃いの作品集です