![山本一力著「辰巳八景」新潮社](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/8a/51663fa98261fd5961a5bf27a4f1a493.jpg)
深川を舞台にした八つの物語
「永代橋帰帆」赤穂浪士切腹 御法を侵しご公儀にさからっては当然ではないか そう思っていた男は死を前にした人の様子に 初めて{惨さ}に気付くのだ
「永代橋晩鐘」好き合っている二人だが互いの想いを口にできぬまま 別離の日を迎える 思い切る そうするしかないのか
「仲町の夜雨」つれあいは子供を欲しがっている けれど どんなに願っても 産めないままに月日は流れ― 身をひいて別れようか― おこんは思い詰める
「木場の落雁」行儀見習い先で さくらは 吉野様を深く尊敬するようになるが
身の丈に合った作法
さくらは自分を見失っていた事に気付く
「佃町の晴嵐」母のききょうが事故で死に見舞いに入った大金で 橋を架けることになった やがてかかった橋も火事で焼け 医者の父も命を落とした
けれどまた橋はかかる 父が忘れられていくような思いにかられる かえでだが―
「洲崎の秋月」辰巳芸者厳助は見初められ 嫁にと望まれる けれど先輩芸者の言葉から 生き方を決める
「やぐらの下の夕照」文通相手を互いに思いながら その恋は叶うことなく 月日ばかりが流れる やがて再会した二人が互いの上に見つけたものは
「石場の暮雪」履物職人輝栄に一目ぼれした男は毎日無器用な恋文を出す 持ち込まれた縁談か
それとも
優しい父親の言葉が娘の背中をおす
ささやかでも しっかり生きている人々
それぞれの幸せ 分が描かれています