気のせいかと思っていた
違和感・・・・何だろう
歯磨きをしていると鏡に白いものが写る それは背後の浴室の丸い照明器具だと思っていた
ただ それは 目の端に姿を捉えた時 白い横顔になっている それも逆様の
戸を半分ばかし開けていると脱衣所の向こうに 白い顔のほっそりした影が行き来する
少しずつの異変
気のせいかもしれないそれ
寝ていて壁の影を見て窓が開いているのだと カーテンがきっちり閉まっていないのだと カーテンの模様が 窓の手すりと重なって 人の顔のように見えるのだと
明るくなってから気付いた そこは窓ではない 窓は1Mむこうで終っている
ただの壁のはず
では夜に見えたあれは何なのだろう
正直・・・深く考えようとは思わなかった
気にすれば・・よくないのだ
そういう気がしていた
眠っていて聞こえる声も 外を歩く人の話し声だろうと
そう思い込もうとしていたのかもしれない
白い顔の影は部屋をうろつくようになった
こちらが確認するように見つめると すっと消えてしまう
不思議と怖くなかったのだ
私はそれが近づいてくるのを 傍に来るのを日々待っていた
とり殺すのなら殺せよーむしろ開き直った気持ちでいた
本を読んでいても眩暈がしてテーブルが近づいていることがあるし 悪化するばかりの体調が嫌だった
その日も 読んでいた本を枕にテーブルに突っ伏していると・・・
「コマルンデス」と小声で何かが言う「コワガッテクレナイト・・・・・」
気分が悪いのにーと ひどくイライラした
「怖いのは嫌いよ」
とかなり邪険に言ってみた
「アタシモ・・アタシモ コワイノハ ニガテナンデス」
「怖がるふりも馬鹿みたいじゃない わざとはできやしないわよ」
これでは まるで いじめっこだと思いつつ
すると その影は言った
「ジャア ベンキョウシテキマス」
そう言って影は消えた
わたしは その影が勉強して また出てくるのを 妙に楽しみに待っている
時々 独り言で「待っているのに まだ出ないの?」と呟いてみる
あの影は 焦っているかもしれないーセカサレテ デルモノデハ ナインデスーって