一人の男の生涯が静かに浮かび上がる短編連作集
「牡丹の女」
内股に赤い血のような牡丹の花の刺青がある女
男達は捜す その肌に包まれる為に
商売女達は捜す 落とし前をつけさせ(リンチにかけ)ようと
女は赤ん坊を抱えていた
世を渡る手段(てだて)は己の体しかない
女は子供をいっぱしの男に育ててもらおうと ある事をする
女の子供を思う気持ちは本物だった
ただ任せた男はげすな部分も隠しもっていたにー
「観音堂」
少年は自分を育ててくれた男の為なら命を捨てる覚悟が既に出来ている
少年を育てた男は 自分の為なら 自分に命預けた人間を裏切るも平気な本性を隠している
「ライオンの舌」
背中に刺青ある日本兵に助けられた事情ある男が知ろうとしたもの
生きる為の覚悟
「眠る蝶」
若者に成長した男に刺青彫った人間がいる
まっすぐな澄んだ目をした赤ん坊は まっすぐな目をした若者に成長
一人の人間を守る為なら 自分の命も捨てる
「竜の爪」
関東へ勢力伸ばす組と もとから東京を縄張りとする組の戦い
澄んだ目を持つ若者は 名のある組長もたじろがせる
「ホットドッグ」
澄んだ目をした男を追ってアメリカまで追っ手がかかる
多くの死
背中の彫り物の話を聞き その命を救う手が伸ばされた
「羊の目」
長年離れた日本へ戻ってきた男は 護る大事な人間殺され筋を通そうと動く
彼の澄んだ目は 何を思い起こさせるのかー
西木正明氏の解説は 小説を読む前と読了してからと 最低二度は読むといいです
描き出される主人公を ただ応援したくなります
主人公が護ろうとする人間の卑劣なるありさまは にくたらしくなります
因果が絡むようなそれぞれの物語
これはやはり文学なのだろうと思いつつー