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「絵本『東京大空襲』」(早乙女勝元作、おのざわ・さんいち絵;理論社)
3月10日。
レミオロメンの名曲は、「3月9日」だが、今日はその翌日に当たる。
ただ次の日という訳ではなく、自分にとっては、2つのことで重みのある日なのだ。
どちらもかなり遠い出来事なのだけれど。
1つは、父の生誕記念日。
生きていれば、92歳だった。
今回は、それについて語ろうと思う訳ではない。
もう1つは、東京大空襲のあった日。
真夜中のB29の空襲で、わずか2時間ほどの間に、東京の4割が焼けてしまった。
家を焼かれた人が、100万人以上。
けが人は4万人以上。
死者は10万人以上。
この晩のことを扱った絵本が、早乙女勝元氏の「絵本・東京大空襲」(理論社)だ。
1978年初版で、私が持っているのは、1985年第18刷のものだ。
早乙女氏が、小学校に入学した娘に大切な話をしたい、ということで書いた話。
早乙女氏12歳の時の実体験をもとに書かれてある。
その日の空襲がどれだけすさまじく、どれだけ悲惨だったのか、私たち大人だけでなく子どもたちにも伝わる本だった。
学級担任時代、この本は、必ず教室の隅に置いて子どもたちに読んでもらおうとしたものだった。
その頃、1993年の3月、新聞の家庭欄に、次のような投書が載ったときがあった。
教室の子どもたちにも読めるようにとあちこちにルビをふって、配った覚えがある。
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「言問橋」という歌のことを、かなり前にここで書いたこともあったが、その恋愛の歌となった舞台の橋は、はるか昔には、こんなに悲惨な過去があったのか、ということも知ることになった。
この投書をした女性は、投書時78歳だったから、それからさらに27年も経ってしまった。
時間が経つと、様々なことが風化していく。
東日本大震災からだって、もう9年になる。
まして、75年も経ったこの「東京大空襲」という惨事があったことを知る人は、どのくらいいるのだろうか。
今は自分の部屋の本棚に置いてあるこの本を見るたびに、1945年3月10日の惨事も風化させてはいけないことの1つだと思うのである。