第5回 雨ニモマケズ
『みんな~、読書感想文、書いて来てくださいね~』
と、小学校の時なんかに、先生から言われたことが
一度はあったことと思います
私も、何度もありました、辛い思い出…
ただ、あらすじを連ねた文章になってしまうのです
『〇〇ちゃんはその時、どんなこと思ったのかな?
そこで、どんなことをしたのかな?』
なんて先生のひとことが、赤ペンで最後に添えられて
ノートが返ってくるのですよね
五重丸は、なかなかもらえないものでした
そんな私の書く噺、
読む気も失せるとは思いますが、どうかよろしくお願いいたします
さて、いだてん
明治44年の11月、羽田運動場はこの日
「国際オリムピック予選場」となりまして、
東京の名門校、大帝、慶応、早稲田、高師、
それぞれより足に覚えのある男子がやってまいりました…?
腕に覚えでしたっけ?
四三くん、宿舎の友3人と共に出場せんと、羽田を探し探しやってまいりました
播磨屋の黒足袋、履いております
おや、TNGクラブの三島弥彦くん、スタート係なんかをやってていいのですか?
自慢の足が泣きますよ
短距離走の予選が始まりました
やっぱりね♪
三島くん、居ても立ってもおられずに、スタート地点に立ちました
「支度して」「よござんすか」「バ~ン!」
これが、スタートの合図です(@_@)
しかも、バーンとなったのは長いライフル銃ではありませんか!
見事なフォームで三島くん、ゴーール
百メートル 12秒 1位
すばらしい
結局、あと400mと800mも、1位でゴール
勉強良し、運動良し、顔好しのおぼっちゃま
「TNG」と書いたうちわ片手に応援の娘たちの黄色い声を浴びておりました
まるでジャニーズを応援するファンではありませんか
さあ、知りませんよ三島くん
家に帰れば、
『三島家の名をけがすつもりじゃったら、親子の縁ば、
切りもす!』
母上様、怖い
大帝の三島くん、ま、たいていのことは、きっとクリアしもす!
さて、マラソンの予選、スタートしました
しばらくは、四三くん達、最後尾軍団を成しておりました
大丈夫?
今まで練習で、40kmなんて走ったことがないとか
マラソンコースの図がおもしろい♪
羽田~穴守稲荷~六郷~川崎
徐々に四三くん、「失敬」「失敬」「失敬」
さて、何人抜いたのでしょうか
すでに、落伍者続出
救護班は、木でこしらえた担架で、倒れこんだ選手を救助します
先導の白バイはありませんが、幟を立てた自転車に乗った学生さんが
伴走しております
コース半ば、伝令を出す人がテント内にいましたが、
さて、電話?
本部と話してるのは確かなんですが…
このマラソンは、神奈川辺りが折り返し地点らしく、
折り返した辺りで、四三くんは4位まで上がって来てました♪
もう、高師の仲間とも、「失敬」して、
姿も見えなくなりました
3位を抜き「失敬」 2位を抜き「失敬」
六郷橋まで、戻って来ました
いよいよ、トップの佐々木くんを目の前に捉えました
差は、50m
降り出していた雨が強くなってきました
四三くんの履いていた足袋の中に、雨水が大量侵入
こはぜも取れ、底も破れ、
え~い!
もう裸足になりました
頭からは血のようなものが、流れ落ちてきています
あれはまるで、歌舞伎の隈取りではありませんか
よっ 中村屋
ちょっと硬そうなフォームで走ってますね
難波走りに似たような…
それよりは、腕が振れてますね
四三くん、とうとうトップを抜き去り
亥の一番に、羽田に戻ってまいりました
嘉納先生
『あれこそ、いだてんだ』
と、大喜び
ゴールに、倒れこみそうな四三くんを、
がっしり抱きかかえて下さいました
意識がもうろうとする中、幼い頃の父とのあの件を思い出し、
長年の心のしこりが、ぽろっと落ちた瞬間でした♪
「ありがとうございます」
2時間32分 世界新記録
ほんと?
四三くん、すっかりヒーローです
浅草辺りの皆さんに祝福されて、
世界を意識してえ~写真をボン!
播磨屋にも行きましたら、お店の前には
”天晴レ!金栗君 当店ノ足袋ニテ、10里走破!”
喜んでいたご店主ですが、
足袋の感想を聞くほどに様子が変わり
ついに四三くん、蹴飛ばされ、這う這うの体で
帰っていきました
そりゃあ、お世辞も言わない素朴な素朴な青年ですから、
最後に足袋は脱ぎ捨てるしかなかったこと、包み隠さず言いました
なぜ、僕を怒るんだろう…と思ってるでしょう
でも、播磨屋さん、何か思案してましたよ
も一度、当たって砕けるが良し
と思いますね
マラソン予選、残った課題は又もや、履物です
日進月歩です、次の新製品を楽しみにしようではありませんか
高師の夜は、祝勝会
羽田の悲劇にあらず、羽田の奇跡なり
可児徳助教授さん、飲み過ぎはだめですよ~