入院中の夫を 勤めの帰りに病院に訪ねるのが、毎日の慣わしだった。
病院の早い夕食が済んで、夫は大抵、ベットの上の机に向かっていた。般若心経と不動明王の真言の写経をしていた。それは、筆を持つ気力がなくなるまで続いた。
近畿三十六不動への納経を思い立って、遺品となった写経を、お参りした三十六のお寺に納めると共に、ご朱印を頂いてきた。
こんな形で供養するのが、残された者の役目だと思う傍ら、空虚な時間が満たされる行脚でもあった。

一人車で訪れたこともあったが、大抵娘夫婦が同行してくれたのはあり難かった。
満願までに三年ほどかかったが、これを機会に、夫が私に与えてくれたこれからの時間を、自分のために使おうという一つの区切りになった。
それ以降、夫からプレゼントされた日々を私自身が幸せと思う生き方をしている。
病院の早い夕食が済んで、夫は大抵、ベットの上の机に向かっていた。般若心経と不動明王の真言の写経をしていた。それは、筆を持つ気力がなくなるまで続いた。
近畿三十六不動への納経を思い立って、遺品となった写経を、お参りした三十六のお寺に納めると共に、ご朱印を頂いてきた。
こんな形で供養するのが、残された者の役目だと思う傍ら、空虚な時間が満たされる行脚でもあった。

一人車で訪れたこともあったが、大抵娘夫婦が同行してくれたのはあり難かった。
満願までに三年ほどかかったが、これを機会に、夫が私に与えてくれたこれからの時間を、自分のために使おうという一つの区切りになった。
それ以降、夫からプレゼントされた日々を私自身が幸せと思う生き方をしている。
