虹

台風の接近を気にしながら、ふと見上げた南の空に、大きな虹。
速い雲の流れが、不気味だ。
いつの時も、この窓から見る限り　雲は西から東に進んでいくのに、今日夕方の雲は、南の空を、東から西に向かっている。それも、足早な動きだ。

遠い海上を、ゆっくり西に進んでいる台風のせいだろうか。

ぽっかり開いた空間に、橋を渡す束の間の虹を捉えたくてカメラを構えた。

緑陰

東向きの縁側には。朝早くから陽射しが入る。１０時過ぎまで厚いカーテンを引いておかないと、暖房部屋になってしまう。

陽射しを少しでも遮るように、簾をしているが、それ以上に有難いのが、梅の葉の繁った緑陰である。

同じ場所にあるのだから、毎年同じように影を作っているかと思うのだが、そうでない。今年は、特に葉の繁り具合がいい。窓に自然の日よけを張ったようで、目にも涼しく感じるし、実際しっかりと日差しを遮ぎっている。

昨年は、毛虫が大発生して、音を立てて葉を食い荒らし見る見るうちに、木を裸にしてしまった。今まで庭木の消毒をしたことがないので、毛虫のなすがままの昨年だった。

この木で育った蛾たちは、卵をこの木に産み付けるのを遠慮したように、今年は、１枚も虫に食われた葉が見当たらない。

そういえば、早春梅の花が寂しかったような気がする。
この夏の緑陰の恵みを有難く思うと同時に、来年は花も多かろうと、窓越しに眺めながら思っている。

天使の涙

朝の庭で、ふと足を止めた。
朝日にきらきら光っている。前日の夕立の名残か、朝露なのか、雑草の葉っぱに並んで光っている。

暑さに怠けて、庭の草引きも暫くしなかったら、ラベンダーを押しのける様に、雑草が増えている。

今度雨が降って土が柔らかくなったら、涼しい朝のうちに、きっと草引きをと思っていた矢先、こんなに綺麗な水玉を載せていた。

天使の涙みたいだ。

こんな清らかな涙を流した日が、私にはあったのだろうか・・・

我が家には甲子園の土がない

若い頃から高校野球が大好きだった。春、夏の期間中は、ラジオで、テレビで観戦し、多くの感動を貰ってきた。所謂、高校野球ファンの一人だった。

そんな私が、茶の間を飛び出し、甲子園のアルプススタンドの、応援の渦の中に身を置いたのは、２００２年春選抜の時だった。

わぁ～っと燃えあがるような球場の雰囲気の中、開会式前の行進に感涙したその日から、四度アルプスに足を運んだ。

強豪に打ち勝った初戦を皮切りに、Yの学校がベスト４にまで勝ち進んでいった。チームの一投一打に、声援を送り、胸を躍らせる日々だった。

３対１で惜敗し決勝戦進出にはならなかったが、最後まで力の限りを尽くして素晴らしいプレーを見せてくれたY達に、ねぎらいと
感謝の拍手を送った。

一礼してグランドを去る彼らは、甲子園の土を持ち帰らなかった。

その日から始まる夏の大会に向けての、思いがそこにあった。
「夏もまた、ここに来るぞ！」

その夏、再び甲子園の土は踏めなかったが、甲子園球児としての大きな宝物を持って人生を歩んでいくに違いない。

Yから与えられた、４日間は、私の人生の宝ものである。

Y.・もっと昔

Y・８歳夏。
天神祭りの船渡禦を見て、ものすごい人ごみの中二人を（兄のTも一緒）はぐれさせない様に両手にしっかりと捕まえて、地下鉄乗り場に向かったが、階段を下りることが出来ないほど人があふれている。

電車を諦めて二駅歩き、やっとホテルに着いた。
疲れているだろうに、へこたれない二人の様子に、安堵と感謝。

ホテルのベット上で、ピョンピョンしていたY曰く。
「お兄ちゃん、僕ら、自慢やなあ。お祭り連れて来てくれるし、こんな、綺麗なホテルに泊めてくれる、おばあちゃん、僕の組におらん。僕のおばあちゃん自慢や。」

嬉しい気持ちを、こんな風に表現したY。

翌日買い物の抽選券で、大きなだるまを、Yは引き当てた。
Yから貰ったプレゼントを今も大切にしている。