迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

ごゑんきゃうげん5

2017-03-23 05:27:35 | 戯作
「ちなみに金澤さんは、その農村歌舞伎に出られたことは……?」 僕は彼女の瞳(め)をさりげなく注視しつつ、訊ねた。 「十三歳のときに、一度だけ……」 金澤あかりはそう答えて、口許だけで笑ってみせた。 そしてわずかに目線を伏せたきり、あとを続けようとしなかった。 あまり触れたくない― そう言いたいように見えた。 目線を伏せたのは、心の内を読まれたくなかったからかもしれない。 しかし彼女 . . . 本文を読む
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