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神奈川縣立金澤文庫の特別展「兼好法師と徒然草─いま解き明かす兼好法師の實像─」を觀る。
學生時代に國語の教科書で「つれづれなるままに、……」の冒頭を見た以外には記憶がない「徒然草」の作者、吉田兼好は従五位の北面武士として京の御所に詰めてゐたが、やがて三十歳頃に出家──
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(※吉田兼好)
との經歴は後世人の捏造で、實は若かりし日に短期間ながら鎌倉幕府の十五代執權にもなった金澤(北條)貞顕に仕へた時代もあったことが、金澤文庫に傅はる古文書類から判明云々。
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(※金澤貞顕)
しかし、展示されてゐる証拠の古文書類を見たところで私のやうな無學者に讀めるはずもなく、ただ紙背文書として遺されたそれらに何か隠された歴史を透かし見るやうとする、そこに自分なりの樂しみを見出す。
金澤文庫を訪れたときは、必ず金澤北條氏ゆかりの稱名寺にも詣でる。
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今日も日中はなかなか蒸し暑かったが、囲む深緑より奏でる鶯の聲を囃子に、當地ゆかりの謠曲「六浦」の憶えてゐる一節を口ずさんで、しばし今を忘れる。