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實は初日から樂屋内で集團感染状態だったことが明るみに出た木挽町の芝居小屋か、つひに興行中止云々。
十六日には「樂屋に出入りする者」が救急車を橫付けして緊急搬送されるなど、裏方のほか大部屋どもが全滅に近いにも拘ず、興行主が持ち前の營利第一主義を發揮して芝居を強行した結果の、とんだ大失態。
予防對策もかなり杜撰云々、かうなると呆れると云ふよりタダのお笑ひ草、ひさびさの樂しい知らせだ。
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日頃は黒衣をまとって暖簾口から師匠(ダンナ)の顔色を窺ひ、機嫌を取ってゐる萬年前座の大部屋どもの唯一のハケ口が夜アソビであることを考へれば、感染經路など言はずもがな。
七月興行“第二部”──いまや賞味期限切れの主役がどうならうが、そんなもの白猿(しらざる)。
同“第三部”──かういふ場當たりなしろものは最近までは新橋演舞場と、棲み分けがはっきりしてゐたハズだが、いまやその境界線も無くなり、ぐっちゃぐっちゃである。
そもそも先代猿之助(おもだかや)の“スーパー歌舞伎”のごとく確固たる理念があるふうでもなく、主演者にしても古劇に持ち役もなければ、父親や數年間“岳父”だった人間國寶の藝を繼承するふうも窺へないところへ、近頃はこのやうなテのしろものに目覺めるなど、ここにも自分自身に惑ふばかりの“不惑”男がゐる。
新橋演舞場で上演された前作では舞臺裏でコケて大怪我をしてやうやく話題に上り、今回の次作では二人の子役がコケて私のやうなヒマ人のネタとなる。
……しばらくは、銀座四丁目界隈には近付かないはうがよろしかろ。