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ラジオ放送の觀世流謠曲より、亂曲「和國」を聴く。
亂曲(らんぎょく)とは、現在では廢曲となった謠の一部、または初めから素謠として創られた短い謠を云ひ、技藝を極めた能樂師にのみ謠ふことが許される“秘曲”云々。
さういふ勿体ぶった事情から、三十曲ほど現存する亂曲のうち實際に耳に出来るのは數曲云々、今回放送の「和國」はシテの人物名で、和歌に入れ込むあまり氣がおかしくなったなにやら面倒臭さうな男が、旅僧に和歌の素晴らしさを語って聞かせる場面が残ったもの云々。
私のやうな素人耳では、この秘傳曲のありがたさがイマイチ傳はってこないが、なんでも聴いて憶えておけば、いづれそれが貴重な財産であることに氣が付くことも、あるであろ。
かつて學生時代に意味も理解出来ずに觀てゐたものが、現在(いま)になってその記憶の株価が上昇してゐるのだから……。