迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

眠くなるのは藝が上手いから!?

2019-12-22 22:31:00 | 浮世見聞記
寶生流の「羽衣」を観に、横浜能楽堂へ。


この公演は『眠くならずに楽しめる能の名曲』と銘打たれてゐたが、これはこの企画の立案者らしき“横浜能楽堂芸術監督”氏ご自慢の著書「これで眠くならない! 能の名曲60選」に因んでゐるらしい。

その著書なら、いつであったか書店で手に取ったことがあるが、パラパラとめくるなり「……くだらん!」と、すぐに書棚へ戻した憶えがある。

演能前の前座にご本人が現れ、解説らしきことを始めたが、予想通りなんの目新しさも中身もない時間がもったいないだけの駄弁りで、アナタの噺がいちばん眠くなると言ひたくなる。

──まう何度も言ってゐることだが、かういふ手合ひが能楽を余計に解りにくくしてゐるのである!



憎まれ口はさておき、シテの豊かな聲量が耳に心地良い和泉流狂言の「業平餅」のあと十五分の休憩をはさんで、目当ての寶生流「羽衣」。

定評通り能そのものは端正だが、美保松原の情景を思ひ浮かべるまでには至らず。

そのぶん教科書のやうな舞ぶりと、やはり地謡をじっくり聴ひて、来年正月に上演の機会を得られさうな我が手猿樂「駿河天人」の糧とする。


十六時三十分に終演後は、そのまま二階展示廊で「山本東次郎家の装束展」を観る。


長袴の両足に踏まれるあたりが擦れてゐたり、三番三の中啓の地紙が一部痛んでゐたり、厚板(着物)の脇の下がほつれて糸で補修してあったりと、華麗さに主眼をおひて展示する能装束では見られない、生々しいまでの使用感が見られるところに、この特別展の価値があると思ふ。



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