「二代目 桂春團治ライブ十番」のCDが、やっと手に入る。
昭和26年、大阪の朝日放送が開局記念に録音し、翌27年2月まで毎週火曜日に放送した二代目桂春團治の落語十三席のうち、現存する十席の音源を初CD化したもので、落語のライブ録音としても最初のものといふ逸品。
朝日放送のホールで録音されたこの十席は、実際にお客を前にしてゐることもあって、かなり乗ってゐることが、高い調子で早間に運ぶ語り口からも窺へる。
常日頃の稽古の賜物とは謂え、これだけの高揚感を維持するには、かなりのエネルギーを必要としたはずだ。
とくに言葉が早い箇所は、よく耳を傾けないとなにを喋ったのか聞き取れない憾みはあるが、ひとりひとりの人物描写が鋭くかつ緻密で、「かういふ人ホンマにいたやろな……」と、姿形までくっきりと思ひ浮かべることが出来る。
そんな七十年近くも昔の音源なのに、現在(いま)いる噺家のやうな親近感、錯覚をおこしさうになるところに、二代目桂春團治の話藝の本質があると、私は聴き取る。
それにしても、この放送からわずか一年ちょっとで亡くなったことを考へると、人生最後の華を咲かせたやうにも思へてしまふ。
そのあたりの機敏を感じとれるのも、やはりライブ録音の妙だらう。
残された写真を見ると、二代目春團治はかなり表情の豊かな噺家だったことがわかる。
現在の私たちは音聲から、その高座における表情を想像するしかないのが残念だが、さぞかし華やかなことだったらうと察する。
またこのとき、春團治夫人がお囃子の三味線をつとめてゐるが──二代目春團治の横で三味線を構へた写真を見ると、かなりの美人だ──、「野崎」をひく撥捌きに“華”を感じるのは、私だけだらうか?
実子の三代目を経て、春團治は現在、四代目を数へる。
三代目も生前、本音ではさうだったらしいが、まだ若いうちに亡くなった弟子の二代目桂春蝶を四代目だと思って、
私は春團治といふ“華”を、接ぎ木する。