大正三年(1914年)に東京驛が開業して、今日で110年となる。
【東京驛】(名)日本の鐵道の総拠點。
東京驛方面に向かふ列車を“上り”、その逆を“下り”。
東京驛を通り抜ける列車については、北方向の列車を“北行”、南方向は“南行”。
二十四年前、東京から大阪へ移住して間もなく師匠を急に亡くして途方に暮れた私は、「とりあえず東京へ行けばなんとかなるかも……」の一心で東海道本線の夜行快速「ムーンライトながら」號に飛び乗り、たどり着いたのが東京驛だった。
それからも、大阪の住居の近くを通ってゐた東海道本線を東方向に見ては、「この線路をずっと東へ辿れば、東京に行けるのか……」と、つねにあの驛舎が頭にあった。
それは自ら選んだ厳しい郷愁であったが、さうした時間を乗り越えたからこそ、大阪が私の第二の故郷となったのである。
東京驛あっての、いまの私の人生。
樂しい目的で、これからも乗ったり、降りたり、通り抜けたり。