新宿住友ビル内の平和祈念展示資料館の企画展「遠き大陸への想い 『満蒙印画輯』に見る風景」を觀る。
日本人の満州入植(移住)を國策としてゐた戰前の日本において、現地を取材した冩真や本(文書)は貴重な情報源であり、支那の大連に拠点をおく東亜印画協會が大正十三年(1924)年八月から會員向けに發行した冩真帳「満蒙印画輯」は、支那や満州、蒙古の日常風景をありのままに冩し取ったもので、複製厳禁であったにもかかはらず、のちには繪葉書など數多の無斷複製が出回り、
(※案内冊子より、以下同)
結果的にはより多くの日本人が満州移住をそそられ、現在においてはのちに“満洲國”がでっち上げられる土地がいかなるものであったか、それをありのままに知ることが出来る、皮肉にして貴重な資料となってゐる。
企画者である櫻井一郎氏の想ひあふれるセピア色の満蒙情緒は、↑のやうなお姉チャンばかりを見たならば、私のやうな哀しいオトコなどは「いざ満州へ!」と騙されたであらうが、ほかを見渡せば砂埃と寒さに晒された荒野な風情にて、およそ一攫千金を狙へる新天地とは映らぬ。
もっとも、開拓者たちはかうした土地を拓いてモノにすることで、それまでの辛苦の代償としてきたことは、事實だ。
しかし、すでに“先住民”たちによる數千年の生活文化が染み付いたこの土地に、當時の日本人たちは、果たして何を見出したのだらうか。
むしろ私には、これらの冩真が『それでもアナタは満蒙に賭けてみますか?』と、警告を込めて語りかけてゐるやうに映ったのは、しょせん後の歴史を知ってゐる後世人だからか。