迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

見れば月こそこれにあり。

2018-01-31 23:26:32 | 浮世見聞記
今宵、満月が赤く染まる。


赤い満月といふと、江戸川乱歩の戦後の名作「月と手袋」を思ひ出す。

冒頭に出てくる赤い満月の描写が、 乱歩の尋常ならざる作品世界を強烈に印象づけてゐたものだ。





今宵の皆既月食のことを何かの媒体では、“スーパーなんとか”と、わざわざ横文字の名称を付けてゐたが、なんでもかんでも横文字にしたがるその感性が、私は嫌ひだ。


満月といふと、

かぐや姫はここで罪を犯した前科者であり、

兎は臼と杵で餅を搗き、

源融の霊はこの晩に廃墟と化した屋敷跡に舞ひ降りて、華やかな生前を懐かしむ。


二月に再演の機会が得られさうな我が手猿楽「駿河天人」のシテも、月宮殿に奉仕する女性である。


そして、先日に坂本頼光の活弁で楽しんだ無声映画「月世界旅行」を思ひ出し、



ひとり笑みして床につく。
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