「青磁」(青瓷)は、中国の宋時代に完成された端正な青い色をした焼き物である。
その「青磁」の「雨上がりの空の色」に魅せられた陶工が、汝窯で焼かれた「青磁」の再現に命をかける。その壮絶な挑戦の姿を描いた乃南アサの小説「火のみち」を読んだ。
「汝窯」(じょよう)。ネーミングだけでも、何か謎めいてエロチシズムの香りがする。汝窯は人を狂気に陥れるほどの美しさを秘めた窯だ。この窯に狂う陶工の話は、以前にも聞いたことがある。
実はこの週末、試しに汝窯のいくつかの作品の形を轆轤で挽いてみた。完成度の高い美しい瓶、何とか形はできるのだが、厚さ数ミリという世界には程遠い。ましてやこれを「雨過晴天」の空色に焼き上げるのだから気の遠くなる話である。
焼き物とは、どうやら底の知れない深い世界らしいのだ。