西インドの階段井戸には驚かされましたが、それに負けない素晴らしい石の文化が日本にもあることを,この夏,見つけました。
栃木県宇都宮市の北西部(旧)城山村荒針一帯に残る「大谷石採掘場跡」がそれです。石切り場の入り口は10メートル四方くらいの広さですが、中は広く、深さも30~80メートル程、(深い所では120メートルもあるそうです)、全体を石で囲った巨大な空間が資料館で,その外からでは判らない地下の採掘跡が、そのまま美術空間です。
写真は、中沢正行さんが撮影した「写真集」の中の一枚です。作業用の階段の小ささを見ても、この石のドームの大きさがわかります。迫力ある現代アート作品のようです。
「写真集 その知られざる世界」から転載
「50メートルもあっただろうか、やっと地の底にたどり着いた瞬間、その神殿のような荘厳さ、静けさ、この世のものとも思えない柔らかい光に、しばらくはファインダーをのぞく事さえ忘れ、その神殿に見とれてしまった。] 写真集「その知られざる世界」を撮影された相沢正行さんは、昭和48年に初めて構内に入った時の感動をそう述べています。
私も、この夏、思いがけずこの石の神殿のような空間に行って感動しました。そして、インドの階段井戸のことを思い出しました。用途も構造も違いますが、地下深くに籠めた人々の祈りが、伝わってくるような気がしました。
静岡から栃木は遠く.東北地方の入り口のような気がしていましたが、焼き物の産地「益子」や「笠間」も近くです。