陶芸工房 朝

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出版記念パーティ

2006年04月17日 | 日記・エッセイ・コラム

2009_029  

 浜松グランドホテルで、友達の出版記念パーティがあり、それに出席した。

 本の題名は「恩寵の風土誌」という。風土誌というから、浜松の風土にちなんだ内容かと思うが、そうではない。よくも悪くも、この風土の中で生まれ育った、ひとりの女の半生記である。

 「柿の木つうしん」という形で、A4版の紙一枚に、エッセイ風の文章に俳句が数句ついた便りが、毎月送られるようになり、それが五年間続いたろうか。 内容はさまざまで、戦前の貧しい農家の暮らしのこと、七人兄弟の末っ子として生まれた自分のこと、父母や兄姉のこと、友人のこと、中学時代こと、時には現在の自分のことが、淡々とした口調で語られていた。 

 それが一冊の本になって送られてきて、驚いた。飾らない文章や、時には正直すぎるほど率直に語られた個人の思い出や出来事は、それなりに興味深い読み物だったのだが、それらが積み重なって、一つの風土の歴史になっていた。まさに「恩寵の風土誌」と言う言葉のように。

 驚いたのはもう一つ。その出版パーティの素晴らしさだ。もちろん有名な評論家の樋口恵子さんや弁護士の渥美雅子さんなんかが、自前で思いっきり立派なバフォーマンスをしてくれたこともあるのだが、居合わせたみんなが、それぞれにとても優しく、とても暖かく、心地よかった。「恩寵の風土誌」の恩寵とは、神や君主の恵みの意味とか。

 浜北のお百姓の家に生まれた一人の少女から始まって、およそ三代になるのだろうか、今、イギリスでヴァイオリニストとして活躍しているという姪のお嬢さんとその夫であるイギリス人のピアニストが、わざわざロンドンから駆けつけてきて、演奏を披露してくれた。曲はチゴイゼルワイゼン。二人の演奏でパーティはクライマックスを迎えた。

 長いようで短い人の一生。人は一生の間に何人の人と出会うのだろうか。そして、その出会いをどれだけ自分の魂の中に受け止めて生きていけるのだろうか。

 こんなに楽しいパーティは、めったにあるものではない。

           ありがとう池本光子さん。


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