テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ その名、忘れるなかれ ~

2017-02-23 22:07:23 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 むぷふッ♪ かッたどォ~!」
「がるる!ぐるるがる!」(←訳:虎です!敵地で勝利!)

 こんにちは、ネーさです。
 はいっ、アウェーゴールを挙げて勝利したユヴェントス、
 8強の座に一歩近付きましたよ♪
 よぉしホームでも勝つぞ!と気勢を上げながら、
 さあ、張り切って読書タイムにゆきましょう。
 本日は、こちらの御本を、どうぞ~!

  



            ―― ショコラ ――



 著者はジェラール・ノワリエルさん、
 原著は2016年に、日本語版は2017年1月に発行されました。
 仏語原題は『CHOCOLAT』、
 『歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』と
 日本語副題が付されています。

 サッカーネタを引っ張ってしまうようですが、
 皆さま、一度はTVのニュース等で目にしたことがあるでしょう。

 試合開始前、ピッチに選手さんたちが並んで記念写真を撮る時に、
 誰かが持っているフラッグには――

「のーれいしずむゥ!」
「ぐるがるー!」(←訳:差別反対ー!)

 そう、フラッグ(というかペナント?)に記されている言葉は、
 《ノー・レイシズム》。

 人種や性別や肌の色や年齢や国籍なんかで
 差別するんじゃないぞ!

 と選手さんたちは訴えているわけですが……

 この御本は、
 《ノー・レイシズム》と訴えることすら出来なかった時代に生きた
 或るエンターテイナーの伝記作品です。

「そこはァ、ふらんすゥ!」
「がぅるるるる?」(←訳:じゃないかも?)

 ショコラ、と呼ばれた彼の名は、ラファエルさん。

 19世紀のフランス、
 パリを中心とする演芸劇場で活躍したラファエルさんの生涯は
 1865年から1868年の間に生まれたらしい?
 生地はハバナであったらしい?
 そして、身分は奴隷であったらしい?と、
 判然としないことだらけです。

 しかし、著者・ノワリエルさんは諦めません。

 身元登録が存在しない、
 ほとんど幽霊のようなラファエルさんの記録を
 自分の足で追いかけます。

「どこからァ、きたのッ?」
「ぐるがるるるる?」(←訳:何を上演したの?)

 ハバナからビルバオへ、ビルバオからフランスへ。

 ここまででももう、
 波乱が連続する展開ですが、
 フランスに入国した彼が得たのは、
 名門サーカス団の……下っ端芸人という職?

「さーかすのォ、もうじゅうゥつかいィ?」
「がるるるるるる?」(←訳:パントマイム師?)

 思いもよらず、ショー・ビジネス界に飛び込むこととなった
 ラファエル青年。

 ただ……ショー・ビジネスとは
 自分の外見が人目に晒される職業でもあるのです。

 強烈な差別感情をぶつけられながら、
 道化師ショコラが歩む道の険しさは、
 想像を絶するものがあります。

 ラファエルさんの名前は、公式書類に残っていません。

 ラファエルさんは、名字を持てませんでした。

 ダンサーとしての素晴らしい才能がありながら、
 認められることはなかった……

「でもォ、きおくにはァ、のこッてまス!」
「ぐるるがるー!」(←訳:これを見てー!)

 画家ロートレックさんのリトグラフ作品
 『バーで踊るショコラ』の輝き――

 御本の原題
 『CHOCOLAT  La veritable histoire d'un homme sans nom』は
 『名もなき一人の男の真実の物語』といった意味合いです。

 書類から名前さえ消されてしまった、
 でも、ひそやかに現代に、
 うっすらと、しかし強く、
 足跡を残すラファエルさんの“記録”を、
 著者・ノワリエルさんに拍手を贈りつつ、
 皆さま、ぜひ、一読を!
 
 

 
コメント
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