『日の名残り』(カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 ハヤカワ文庫)を読んでいる。
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もう翻訳の長編小説を読むのは面倒なのだが、一応ノーベル賞作家のものを一冊はと思って。
その110ページにこんな記述がある。
《さらには、召使たちを集め、軍隊調に檄を飛ばすことまでいたしました。》
これはおかしな言葉遣いだ。
もちろん、カズオ・イシグロさんはこれとは違う表現をしているのだろう。
翻訳の問題だろう。翻訳をされた土屋さんは大変偉い人だと思うのだが。
高島俊男さんが『お言葉ですが…』③にこんなことを書いておられる。
「ゲキトバ」新説より
《(略)たとえば「ゲキを飛ばす」というのがスポーツ記者は好きらしくて、よく出てくる。「なさけ
ない負けかたに腹を立てた星野監督は選手を集めてゲキを飛ばした」
これはねえ、もし言うなら「活を入れる」と言うんだよ。「ゲキを飛ばす」というのは、遠くにい
る味方(あるいは味方になる可能性がある勢力)に呼応を呼びかける書信を発すること。たと
えば鎌倉幕府打倒に立ちあがる決意をした武将が、「共に挙兵しよう」という手紙を持たせて
使者を各地に派遣する。その手紙が「ゲキ」、漢字で書けば「檄」だ。目の前にいる奴を叱り
つけるのをゲキなんて言うものか。
スポーツ記者諸君は多分、ゲキというのは激励の略語で、強烈に激励することを「ゲキを飛
ばす」と言うんだと思っているんだろうね。学生のころに監督や上級生に叱られたら、「ゲキを
飛ばされたよ」なんて言っていたんだろう。》
これはこれまで何度も紹介してきたが、困ったものだ。
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もう翻訳の長編小説を読むのは面倒なのだが、一応ノーベル賞作家のものを一冊はと思って。
その110ページにこんな記述がある。
《さらには、召使たちを集め、軍隊調に檄を飛ばすことまでいたしました。》
これはおかしな言葉遣いだ。
もちろん、カズオ・イシグロさんはこれとは違う表現をしているのだろう。
翻訳の問題だろう。翻訳をされた土屋さんは大変偉い人だと思うのだが。
高島俊男さんが『お言葉ですが…』③にこんなことを書いておられる。
「ゲキトバ」新説より
《(略)たとえば「ゲキを飛ばす」というのがスポーツ記者は好きらしくて、よく出てくる。「なさけ
ない負けかたに腹を立てた星野監督は選手を集めてゲキを飛ばした」
これはねえ、もし言うなら「活を入れる」と言うんだよ。「ゲキを飛ばす」というのは、遠くにい
る味方(あるいは味方になる可能性がある勢力)に呼応を呼びかける書信を発すること。たと
えば鎌倉幕府打倒に立ちあがる決意をした武将が、「共に挙兵しよう」という手紙を持たせて
使者を各地に派遣する。その手紙が「ゲキ」、漢字で書けば「檄」だ。目の前にいる奴を叱り
つけるのをゲキなんて言うものか。
スポーツ記者諸君は多分、ゲキというのは激励の略語で、強烈に激励することを「ゲキを飛
ばす」と言うんだと思っているんだろうね。学生のころに監督や上級生に叱られたら、「ゲキを
飛ばされたよ」なんて言っていたんだろう。》
これはこれまで何度も紹介してきたが、困ったものだ。