喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『多島海』44号

2023-11-14 15:27:32 | 
今年の小野十三郎賞を受けられた詩人、江口節さんからお贈りいただきました。
『多島海』44号です。詩と散文の同人誌。



いつもありがとうございます。

松本衆司さんの詩「嵐山プロセス」です。

実はこのあと、もう一ページあって、
終連は次のようになってます。
   いずれ来る 
   断層の闇の中に
   川面に浮かぶ
   月があることを
   ぼんやり
   考えている

きめ細かな描写と思索の詩ですね。
この初行に目が留まりました。
最近あるところに書いた原稿に使った杉山平一先生の詩「橋の上」の初行に重なっていて驚いたのです。
偶然です。


これは江口さんの詩「空耳」。

このあとつぎのように続きます。
   聞いとらんだけじゃろうが
   生返事ばぁして」

   やっぱり空耳だよね?
   おじいちゃん

命のつながりを懐かしく、そしてあたたかな筆致で書かれていて好もしい作品でした。
このタイトル「空耳」ですが、同じ題の作品がわたしにもあります。
わたしのは超軽いものですけどね。

ほかのお二人の作品も上質のものでした。
散文ですが、彼末れい子さんの「マダニに咬まれて」は興味深い話でした。
マダニも怖いのですね。17日もの入院だったと。

松本さんの「アポリネールのように その四」は、大阪文学学校の歴史の証言。貴重なものです。
杉山平一先生や安水稔和先生の名前も出てきて興味深かったです。

江口さんの「清水茂さんの想い出」。『ドン・ジュアンの裁き』の江口さんの翻訳が面白かったです。

最後のページ、裏表紙の裏ですが、紙の色が印刷に適さないのではないでしょうか?わたしの目では読めなかったです。

江口さん、ありがとうございました。

  

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「点ほどの疑惑ひたすら皿洗う」

2023-11-14 12:58:52 | 文芸
川柳句集『石の名前』を読み終えました。



気になる句はたくさんあって上げるときりがないので、いくつかを。

   鳴りそうで息をひそめている電話
   湯に沈む乳房がふたつあった頃
   点ほどの疑惑ひたすら皿洗う
   病院の匂いは生きてゆく匂い
   余命宣告 幸せなんてカンタンだ
   カレー煮る 息子よ母を忘れるな
   甦れ私の森よ鳥たちよ
   片翼を失くしてからの飛行距離
   歩道橋半ばで空に吞み込まれ


敢えて解説は控えておきます。
やはり後半は重い句が印象的でした。
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句集「石の名前」

2023-11-14 09:33:27 | 文芸
『現代川柳』の発行人、中川千都子さんの川柳句集『石の名前』です。



2015年に初版。
そして今年2023年8月に第3刷。
帯文の「石の名前は癌。そこから始まる詩(うた)があった。」で、ただならぬ句集だと感じます。
中川さんとはわたし面識がありません。
奥付を見ると2002年に時実新子さんに師事されたとあります。
わたしが新子さんと交流を始めたのとほぼ同時期です。

今、パラパラとページを繰ってみましたが、どうやら後半にはただならぬ句があるようです。
そして今、第一章の「森」を読み終えたところです。
いい句がたくさんありました。

   この人の煙草もいつか煙くなる
   見つかってしまう醜くなる途中
   この指の光線で死ぬ二三人 
 (これは新子さんを彷彿とさせる句ですね。)
   御堂筋亡父を見かける見失う
   途中から黙読になる置手紙
   私はニセモノそれなりに光る
   眼の開いたまま人形は捨てられる
   蹴っているうちに忘れてゆく理由
   藁人形藁の軽さに戻る朝

   
まだ五分の一ほど読んだところですが、あとを読むのが楽しみです。
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