◇杉原千畝 スギハラチウネ(2015年 日本 139分)
監督 チェリン・グラック
◇ジェームス・ボンドじゃないんだから
いくらなんでも『ロシアより愛をこめて』のようなシベリア鉄道での活劇はないんじゃないか。
どうも感覚が違うっていうか、杉原千畝という人をどのように描こうかとか、製作者側がこうした人道的な行為についていかなる意見を持っているのかといったことがうまく見えてこないんだよね。人間を超越したような英雄を描いたところでダメなだけで、なんで唐沢寿明も小雪も長い収容所生活の果てに解放されたとき衣類も汚れてなければ気持ちも溌溂としているのかっていうような重箱の隅を楊枝でほじくるみたいなことをいっても仕方ないとはおもってるんだけど、どうにもいわなければ気が済まないっていう感じなんだよな~。
当時、リトアニアまで辿り着いたユダヤ人を救ったのはなにも杉原千畝だけではないというのは、むろんちょっとは描かれているものの、しかしそれでも杉原をいちだんと高く扱っていることにちょっとした違和感がある。たしかにユダヤ人救出のひきがねをひいたのは杉原で、杉原に続いてさまざまな人達が人道的な行動をとっていったわけだけれども、なにもこの一連の物語は杉原を英雄とすることではなく、杉原のとった行為に拍手を捧げ、かつそれに続いた人々を掘り起こして喝采を浴びせることに主題を置かなくちゃいけなかったんじゃないのかな~っておもうんだけどね。