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サウルの息子

2016年04月23日 15時17分49秒 | 洋画2015年

 ◇サウルの息子(2015年 ハンガリー 107分)

 原題 SAUL FIA

 英題 SON OF SAUL

 監督・脚本 ネメシュ・ラースロー

 

 ◇1944年10月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所

 きついな、これは。

 まあ人はそれぞれだから絶賛する人もいるだろうし、いろいろと受賞するかもしれないけど、ぼくみたいな素人にとっては鑑賞し続けるのもきつかった。なんつっても、カメラがきつい。スタンダード・サイズで、しかも被写界深度が恐ろしく浅く、くわえて手持ちっていう徹底ぶりで、ちょっと酔った。ていうか、めまいがしそうな感じだった。そりゃまあリアリズムってのはなにかっておもったとき、主人公の視点に拘りたいって気持ちはわからないでもないんだけど、僕だったらもうちょい人間の視界に合わせて撮るけどなあって観ながらずっとおもってた。

 たしかにルーリグ・ゲーザっていう主役の男性は味わい深い表情で、ラストの納屋の外に唐突に登場した少年を見てほっとしたような、これでなんとか天国に行けるかもしれないっていうような微笑みを浮かべるところなんざ、いやほんと、とってもいい表情だったんだけど、でもやっぱりきついな。あ、このルーリグ・ゲーザって人、ブタペストの詩人なんだってね。なるほど、味わい深いわけだ。

 ただまあ、蜂起の後、一緒にゾンダー・コマンダーをしてるちょいと渋めの男に「死者を埋葬するために生者を犠牲にするのか」ともいわれちゃうことになる少年の死体を抱えて森の中を逃げていって川を泳いで渡る段になったときの撮影なんだけど、これは凄かったわ。

 いや、この作品はほとんど長回しで、それもルーリグ・ゲーザのミディアムショットとクローズアップばかりが多様されるもんだから観にくいったらありゃしないんだけど、ともかく延々と続く長回しで、爆破やエキストラを扱わないといけないスタッフは大変だっただろうなってのは擱いといて、そうした中でこの川の場面は凄い。

 死体を抱えて川に入る前から、死体が流れてしまって「待ってくれ」と手をもがかせ、少年と別れてしまった悲しみのせいでもう溺れちゃうんだってことになったとき、一緒に逃げてた解剖医がいきなりフレームインして救けてくれ、なんとか岸に近づいていくまでがワンショットなんだけど、まじに溺れそうな気配で、なんとも長い。まあ、この別れがなかったら、ラストのいきなり生き返ったように登場する少年(2カットしかないのよ)が活きないんだけどね。

 でもまあなんにしても、これはきついわ。

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