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ノルウェイの森

2016年04月27日 02時06分09秒 | 邦画2010年

 ◇ノルウェイの森(2010年 日本 133分)

 監督・脚本 トラン・アン・ユン

 

 ◇1969年、早稲田大学

 信じられないような話だけど、ぼくはこの原作を読んでいない。

 世の中でいちばん売れた恋愛小説ってことくらいは知ってる。でも、読む機会がないままに結局、映画だけ観た。まあ、ぼくみたいな活字に疎い人間が目を通したところで右から左へ文字が流れて消えていくだけのことだろうし、もはやそれだけの体力も根気もない。いや、ほんとのところ、小説を読むのも映画を観るのも気力と体力の勝負でしかない。かろうじて受動態の極地のような映画鑑賞だけはできるものの、長編小説をじっくり読んでいられるような心の余裕はないんだよね。

 そんないいわけはこの辺でやめて、この映画のことだ。ひとことでいえば、懐かしかった。本学の中庭も文学部の中もなんとなく懐かしく、ふたりで散歩したりしてるところは甘泉園だろうか、もしかしたら別なところで撮影されてるかもしれないんだけどまあそれはそれでいいとして、当時の寮やラブホテルについてはまるでわからないけど、郊外の下宿というのはあんな感じだったかもしれない。

 ただまあ、ぼくはこの時代よりも10年ほど遅れて大学生になったから学生運動が血気盛んに行われていた時代の大学生についてはちょっとよくわからない。わからないけれども、ほとんど似たようなことを考えていたみたいで、心の崩壊していく過程と恋が成就し破綻していくさまとが綯い交ぜになっていく情景は、なんとなくわかる。だから、この映画がおもしろいとかおもしろくないとか当時の風物や生活についてリアルだったとかリアルじゃなかったとかそんな意見を口にするつもりもないし、ただ懐かしい風景と心情とが淡々と続いてたな~っていうくらいしかできない。

 大学時代につきものなのは、怠惰な日々ともの悲しい恋とうぶでぎこちないセックス、そして他者からすれば恥ずかしい以外の何者でもない自己陶酔とかで、それ以外のことをおもいだせといわれてもなにひとつ浮かんでこない。かろうじて季節を問わずに旅に出ていたときの風景や出会った子についての断片的な思い出くらいなものだ。

 そうしたことをおもえば、この映画は単調な印象はあるものの10年遅れていたぼくらの日々にも通じるものがあるようにおもわれるんだけど、トラン・アン・ユンのこれまでの映画にくらべるとやや官能さが物足りない感じはしないでもないけど、浮遊感はあったような気がする。

 総じていえば、ただなんともいえず懐かしかった。

 あ、でもぼくは女の子を交換してセックスするようなことは絶対にしなかったけどね。

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