◇トレヴィの泉で二度目の恋を(2014年 アメリカ 94分)
原題 Elsa & Fred
監督 マイケル・ラドフォード
◇『Elsa y Fred』のリメイク
もともとは2005年に封切られたスペイン・アルゼンチン製作の映画だったらしい。
といっても、とあるアパートへ引っ越してきた気難しい老人のクリストファー・プラマーが、隣りの部屋に棲んでいる虚言癖のある老女シャーリー・マクレーンと知り合い、やがて恋愛に発展するという、なんとも他愛のない作品なんだけれども、そこはまあベテランの芝居だし、上手に作られてて小品ながらおもしろく観た。
下敷きになっているのは、アニタ・エルヴァーグとマルチェロ・ マストロヤンニの『甘い生活』で、そこで描かれるトレビの泉の幻想的な場面に憧れるシャーリー・マクレーンのために、クリストファー・プラマーが一肌脱ぐことになるわけだ。けれども、かつてはトラップ大佐が子供たちに弾き語りをしたように音楽家になろうとしていたものの、現実の風を痛いほど受けてきて偏屈きわまりない性格になってしまっているため、まずはそれを融かさねばならないわけで、やはりクリストファー・プラマーはそういう役がうまい。
まあ、いくつになっても男は現実の中でしか生きられない不器用な生きもので、女は夢想の中へ現実逃避してしまえる器用な生きものであり続けるんだな~って感じだよね。
ちなみに、トレヴィの泉なんだけど、ぼくはトレビの泉と書く。発音がどうのこうのではなく、ヴィという書き方にはどうにも閉口してる部分があるからだ。もともと、日本語の書き方では「ヴィ」は「ビ」だった。それが認められていない頃は、ぼくはことさらしつこく「ヴィ」と書いたものだが、どうにもこの頃、嫌になってきてる。だから「ビ」と書くことが多い。ことにトレビの泉はそうだ。
で、この造られてから250年になる泉なんだけど、背を向けてコインを投げ、ちゃんと泉の中に入ったとき、その枚数によって「また泉に戻ってこられる」だとか「恋が成就する」だとかあるらしい。外人さんがそうしているかどうかは知らないが、ともかく日本人はあらかたの人がコインを投げてきたんじゃないだろか。かくいうぼくもそうだ。けど、コインを投げてからぴったり40年になるんだけど、願いはどうなったのかなあ。