◇ONCE ダブリンの街角で(2007年 アイルランド 87分)
原題/ONCE
監督・脚本/ジョン・カーニー
音楽・主演/ザ・スウェル・シーズン(グレン・ハンサード マルケタ・イルグロヴァ)
出演/マルチェラ・プランケット ダヌシュ・クトレストヴァ ヒュー・ウォルシュ
◇Miluju tebe
グレン・ハンサードがマルケタ・イルグロヴァに対して「別居してる旦那を今でも愛しているの?」と訊いたとき、マルケタはチェコ語で「Miluju tebe」で答える。わたしが愛しているのはあなただけよ。エレジーだね。
なんかまあ話は単純で、別れた恋人マルチェラ・プランケットの面影を歌に託して街角でギター片手に流して歩いている男グレン・ハンサードが、娘と母親ダヌシュ・クトレストヴァの面倒を見ている花売り女マルケタ・イルグロヴァと知り合い、彼女の手助けと父親ビル・ホドネットの支援により遅ればせながらロンドンでプロデビューを果たしていこうとする一方、女は夫が戻ってきて一緒に暮らし始めるっていう物語なんだけど、いやまあ、かれらは実際にも共に音楽活動をしているらしく、そのオリジナル曲が随所に挿し込まれていて、それを愉しむ向きにはいいんだけど、ぼくみたいに音楽のわからない奴の場合、ちょっとね。
おもしろかったのは資金を借りようと訪れた銀行の融資課長がいきなりギターをかまえて『聞いてくれ』と弾き語りを始めたところくらいだったかな。ただ、リアルなタッチは好感がもてたし、主人公たちのアコースティックな曲は決して悪くはない。とても自然な感じが好かったしね。