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▽=☆

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場

2022年04月15日 00時20分57秒 | 洋画2017年

 ◇アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場(Tuntematon sotilas)

 

 なるほど、継続戦争のあらましなんだね。

 でも、古いな。古参兵エーロ・アホの視点で描かれるんだけど、カレリアで農場を営んでいたのが土地を奪われたことからその奪還のためにも入営して戦い続けるっていうのを主軸にして、そのまわりの数人の兵たちの動向も描いていくっていう常道の筋立てで、なんとも古臭い。

 カリンカを歌い踊って、兵たちの相手になる女教師のところだけが妙になまめかしいのと、エーロ・アホが休暇で帰村したときに女房のパウロ・ヴェサラとサウナに入るところだけがよかった。あとはたしかに相当な火薬をぶちこんだんだろうなっていう戦争場面の連続なんだけど、どうにも将官が悪くて兵は好いやつっていう構図はなんとかならんものかっておもっちゃったわ。

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キング

2022年04月14日 22時13分19秒 | 洋画2019年

 ◎キング(The King)

 

 15世紀の鎧ってのはこんなに素朴なのか~とあらためておもったりした。

 ティモシー・シャラメ演じるハル王子がどうしてゴミ溜めのようなところで放埓な暮らしをしているのか、なんでイングランドの王位を拒否しているのかっていうあたりの理由がいまひとつ明確でない気がするし、父親のヘンリー四世を人でなしと罵るっていう父と子の確執はさらっとしてるもんだから映画だけだとよくわからない。シェイクスピアを読み込んでないとなかなかね~。

 で、本筋は、アルフルール包囲戦とアジャンクールの戦いなんだけど、なるほど、釣り野伏せになってるわけね。史実はもっと複雑なんだけど、そんなことはどうでもいい。ここで、ぼくらのティモシー・シャラメは、冒頭の一騎打ちで勝って兵の損耗を防いだところが伏線になってて、フランスの王子ことロバート・パティンソンに一騎打ちを挑むんだけど、このあたりの伏線処理はとてもわかりやすい。

 わかりやすいといえば、そうか、ショーン・ハリスが暗殺で釣ったのか。つまり、アジャンクールの戦いはこの映画では小さな釣り野伏せになってて内円で、大きな釣り野伏せで映画の枠にあたる外円になってるのが暗殺の謀略だってことなのね。なるほど、それをフランスから嫁いできたリリー=ローズ・デップの言葉でようやく感づくティモシー・シャラメっていう構図になってるわけね。暗殺で釣られるイングランド、軽装の歩兵で釣られるフランス軍ってわけか、なるほど。

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紅海リゾート 奇跡の救出計画

2022年04月13日 01時11分24秒 | 洋画2019年

 ◇紅海リゾート 奇跡の救出計画(The Red Sea Diving Resort)

 

 まるで『海の翼』のようなラストの飛行機救出だけど、まあそれはさておき、冒頭、状況を把握するのが難しい。ナレーションで説明されてもイスラエルやモサドに関して無知な僕にはどうもね。7人の侍のような集め方はもうやめた方がいいとおもうな。

 しかしエチオピアに黒人のユダヤ人がいるというのは知らなんだ。

 この最初に救出される174人の中にナレーションの黒人少年がいるんだけど、かれらが1000キロも歩いて到着したっていう苦労話はまるで描かれていない。これはあかんよね。倒壊しかかった小さな平屋のリゾートにほんとうの客か来るのも中途半端だし。とはいえ、まあまあの出来な気はするけど、タイトルバックに登場する過去の現実の写真の方が凄くて、こちらに感動しちゃったわ。

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セブン・シスターズ

2022年04月12日 13時03分46秒 | 洋画2017年
 ◎セブン・シスターズ(What Happened to Monday)
 
 
 なるほど、トミー・ウィルコラって監督はノルウェー出身なのか。それで、ノオミ・ラパスが起用されたのかな?
 
 それはどうでもいいことだけど、おそ松くんたちより多い七つ子が主人公だと、主役みたいな姿形のひとりが遠慮なく殺されても、まだクローンのような姉妹が残されるわけだから、何回か主役みたいな女の人の窮地を何度も体験できるわけで、これは観てて面白さがあるね。
 
 まあ、なんていうか、原題の「なにがマンデーに起こったのか」ってのから、なんとなく、あ~こいつ、なんかあるな~とおもっていれば、案の定、内緒でマーワン・ケンザリとセックスしてたってことがばれたとき、窒息プレイが好きなんていう裏の性癖までわかっちゃったとき、その疑惑は確定的なものになってくる。
 
 ノオミ・ラパスにとっては巻き込まれる役もそうだし、グレン・クローズと取引していく嵌める悪役まで演じられるわけで、いやまあ、得したね~って感じだ。
 
 ただ、設定が2073年っていう半世紀後の近未来なんだけど、このとき人口が100億に達して大変なことになるっていうのはちょっと楽観的な気もしないではない。なぜって1990年のあたりに世界の人口が35億を超えたら極端な食糧難になり、地球の環境が崩れるとかって予測だったはずが、たった30年後の今ですら倍増してるわけだから、これは100億なんていうかわいらしいものじゃないって気はするよね。
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ロストガールズ

2022年04月11日 13時19分24秒 | 洋画2020年

 ◇ロストガールズ

 

 ロングアイランドの連続殺人鬼と呼ばれる事件が発覚したのは2010年の春だったみたいだから、それから10年経って製作されたわけだね。題材はきわめて興味深いし、エイミー・ライアンも好演してる。感情の起伏をおしころしたトーマシン・マッケンジーの綺麗さも際立ってる。撮影も、なんとなく陰鬱な殺風景をとらえてて、悪くない。

 でも、なんかつまらない。

 起伏のない演出と中途半端な脚本のせいかもしれないんだけど、これまで容疑が掛けられてる何人かの連中の白黒がいまだについていないことが濃厚に関連してるのはよくわかるとしても、もうすこし緊迫感があってもいいし、観客の想像を刺激する部分があってもいいっておもうんだけどな~。

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ソルジャーズ ヒーロー・ネバー・ダイ

2022年04月10日 13時33分30秒 | 洋画2017年

 ◇ソルジャーズ ヒーロー・ネバー・ダイ(Kiborgy)

 

 事変というか、戦争というか紛争というか、長い長い戦争の中の一部というか、よくわからない。

 ただ、ウクライナ側から見た紛争時のドネツク国際空港における戦闘ってことだけはわかる。脚本は、ハリウッドに感化された観がありありで、なんとなくスマートな会話を交わしたいところだけど上滑りしてる。半世紀くらい遅れてるような印象があるな~。

 でも、画づくりは本気でやってる分、すごい。

 ただ、戦闘していないときに、まあ、語ることがどうにも禅問答みたいで。

 おまえはゴーゴリは世界の文学を形づくったというが、おれはロシア語で書かれたことが気に食わないんだ、と国粋主義者と揶揄される兵士が反論して、おまえは夢見るリベラルバカと呼ぶところがある。母国語を使わずにロシアの深淵さを讃えるからこんなことになるんだと

 そりゃまあそうかもしれないんだけど、こんな会話を戦闘中にするんだ?

 問答はさらに続いて、いまだにコサックしかない骨董品めがと詰られれば、今までに母国語で話してきたか?とまた反論を被せる。充分に話してきた言語は武器になる、それで初めてウクライナ人といえるんだ。そんな主張をして意見を戦わせる。すげえな、戦闘よりこっちの方が長くないか?

 戦場の禅問答だったわ。

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ヴィジット

2022年04月09日 13時44分31秒 | 洋画2015年

 ◇ヴィジット(The Visit)

 

 M・ナイト・シャラマンは新作を撮るたびに確実につまらなくなってるんじゃないかっておもえちゃうのは僕だけなんだろうか?

 この姉オリビア・デヨングと弟エド・オクセンボールドの撮影してるとされる画面だけで構成されてるってのは、たしかにすごい。すごいんだけど、それは自主制作映画的な感動だけで、あとはひたすらつまんない。

 おばあちゃんディアナ・デュナガンの、気が狂ったような(実はほんとにそうだったんだけど)縁の下の鬼ごっこや、真夜中に真っ裸で爪をとぐところや、ネグリジェで這い回ったりするところは、いやいやまじかよってくらいな面白さはある。

 けど、このあたりすべて足しても93分あるこの映画の中の1分間くらいでしかない

 あとはひたすらつまんないな~っていう時間が過ぎていく。痴呆が始まって『暗闇さん』とお友達になってる祖父母の家に泊まりにきた孫たちの妙にうまいホームムービーを観させられてるだけだ。トイレのレバーを素手でさわったら菌がついてもう取れないと騒ぐ弟の気持ちだけはよくわかるし、最後にはもうバイキンのかたまりのようなモノで顔をおおわれて狂乱状態になることで解消されるっていうオチはつくけど、まあそのあたりも夏休みの体験談だ。

 ただ、隠し撮りのカメラを見つけたときのばあちゃんはさすがに怖かった。そう、実はこのあたりから、ちょっとおもしろくなってくる。ナイト・シャラマンお得意の展開なんだけど、でも、精神病院から脱走した老夫婦みたいな男女が、おじいちゃんとおばあちゃんを殺して地下室の長持にぶちこんで成りすましてたところへ孫たちがやってきちゃったんじゃないかって陳腐な想像をしてたら、まじか……って。まいったな~。

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特捜部QPからのメッセージ

2022年04月08日 13時54分31秒 | 洋画2017年

 ◎特捜部Q Pからのメッセージ(Flaskepost fra P)

 

 今回もじつにおもしろかった。

 ニコライ・リー・カースとファレス・ファレスもだんだん板についてきた。

 ま、それはさておき、空き瓶に入れた「助けて」の手紙がまだまだ通用するんだっていう意外な驚きがあったわ。エホバの証人の家の子供の誘拐事件なんだけど、それをしているのか教区を廻ってる人間だとかいう展開とか、映画にしてもいいんだろうか?って疑問を抱くのは老婆心かしら。

 でもまあ、ロケーションがいいね。海上の風車と小屋。田舎の信仰心に固まった家のたたずまいとかね。

 でも、ちょっと『天国と地獄』すぎないか?ふたりの子供といい、音が聴こえてきてその風車の風を切る音から監禁されていた場所を特定するとか、まるまる『天国と地獄』じゃんね。信仰心ってのと、職人気質と貧富格差ってのが、違ってるように見えるんだけど、それって本質的にはおんなじだし、この原作はなんか賞を獲ってるらしいけど、いいのかそれで?

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シンデレラマン

2022年04月07日 12時17分05秒 | 洋画2005年

 ◎シンデレラマン(Cinderella Man)

 

 どうしても『ロッキー』をおもいだしちゃうんだけど、それはさておき、ジム・ブラドックの実話を映画化した分、リアリティはあるし、たった一本で栄光と転落と極貧と復活と家族愛のすべてを描いているところは『ロッキー』と違う。スタローンはシリーズでそれを描いたから。

 それにしても、ボクシングという範疇だけでなく、これがどんな仕事でも似たような情況はあるわけで、実は普遍的な命題を物語にしていることがひしひしと伝わってくる。ロン・ハワードの演出もあるんだろうけど、ラッセル・クロウやレニー・ゼルウィガーやポール・ジアマッティの演技もあるんだろうね。

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THE UPSIDE 最強のふたり

2022年04月06日 02時21分21秒 | 洋画2019年

 ◎THE UPSIDE 最強のふたり(The Upside)

 

 リメイクが完成するまで6年も掛かったっていうのがちょっと意外なんだけど、その分、秘書の設定と新たな物語が上手に添えられてる。

 まあ、文通の相手とはうまくいかないだろうなっていうのがリアルな受け取り方だし、なにもかもわかってる秘書が実は恋心をもっててやがて結ばれるのを暗示してるってのいう方が物語としては上手な作り方だっておもうし。ニコール・キッドマンを起用するっていうのはそういうことだろう。

 けど、ニコール・キッドマンを解雇する場面がないのはよくないね。そうじゃないとラストの再会が生きてこない。

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最強のふたり

2022年04月05日 02時03分28秒 | 洋画2011年

 ◎最強のふたり(Intouchables)

 

 頸髄損傷の富豪とその世話をする羽目になった黒人の物語ってのはこの映画の中だけで、実際はアルジェリアの青年らしいんだけど、でもまあこんなことが実際にあったんだね。ただ、ふしぎなもので、海外だと立場のまるで正反対な人間同士がひょんなことから深い絆を結んで生涯を共にするような関係を築いていったりするんだけど、邦画にはあんまりこういう物語がない。なんでなんだろう?

 おたがいがコンプレックスをもってて、それは仕事や財産だけではなくて肉体や病気や恋愛もあったりするんだけど、その足りないものを補い合えるような関係を築いていく物語で、おたがいが本能的に察知してひと目惚れするようなものなんだなと。人の出会いってのはこういうこともあるんだよっていう話だね。

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靴ひも

2022年04月04日 00時45分44秒 | 洋画2018年

 ☆靴ひも(Laces)

 

 監督のヤコブ・ゴールドワッサーは実際に子供が知的障害を抱えているらしい。だから演出をひきうけるのに躊躇したみたいだけど、さすがに上手に撮れてた。

 30年ぶりに息子をひきとりながらも重篤な腎不全を患って知的障害の子の腎臓をもらわないといけない立場に追い込まれる父親をドブ・グリックマンは上手に演じてるし、その子をネポ・キムヒはこれまたリアルに演じてる。いや、わかるな。どんなに重要な仕事をしていても13時に食事と決めたらそうしないとだめなんだよね。

 しかし、実の娘のように尽くしてくれるヤフィット・アスリンの綺麗なことといったらない。

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愛を読むひと

2022年04月03日 00時19分49秒 | 洋画2008年

 ◎愛を読むひと(The Reader)

 

 けっこう身を入れて観ちゃったもんだから、レイフ・ファインズの行動に腹立たしさばかりおぼえる。それも2度、いや、3度。というのも、過去、戦後まもないときに童貞を失って、ケイト・ウィンスレットの身体に溺れているとき、朗読させられつづけたら嫌でも文盲かどうかはわかるってもんだが、それのかけらも気づかないってのは、ちょっと物語上の都合が良すぎないか?

 それをまあ百歩ゆずったにせよ、チンチン電車の車掌から事務方に昇格できる機会があったのに逃げるようにいなくなり、やがてレイフ・ファインズが大学生になったときそのゼミの実習で裁判を傍聴するんだけど、そこでケイト・ウィンスレットと再会し、ナチスの戦犯にさせられ未必の故意を疑われてるんだけど、ここでようやく文盲であることに気づく。だったら、そこで証言して助けようとしてやれよっておもうんだな。というより、物語の上からいってもその方がドラマチックになるし面白くなるっておもうんだけどな。これは作り手に対しての怒りもあるな。

 で、最後のひとつだけど、年老いたケイト・ウィンスレットの出獄直前に面会できたとき、そこで希望を持たせるんだが、ケイト・ウィンスレットとしては頭が悪い分、レイフ・ファインズが自分の身柄をひきとってくれて一緒に棲んでくれるものとおもっていたらそうじゃなかったっていうときの絶望感といったらないわけで、結局、そのせいで首つり自殺をしちゃうわけで、いったい、ケイト・ウィンスレットの人生ってなんだったんだよって。そういう怒りを生ませる物語は大したもんだけど、でも、せっかく感動できる要素のある作品を1段低いものにしちゃった観はある。これじゃだめだ。

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THE GUILTY ギルティ(リメイク)

2022年04月02日 00時37分29秒 | 洋画2021年

 ◎THE GUILTY ギルティ(The Guilty)

 

 リメイク作品に、ジェイク・ギレンホールが出てるんだけど、オリジナルとほとんど変わらない。

 といっても緊急連絡センターの電話取りに奉仕に来た刑事だけを追いかけたリアル・タイム映画なんだから変えようもないわけだけど。ギルティっていう邦題がなるほどっておもわせるのは、この刑事ジェイク・ギレンホールが罪を背負ってるからなんだけど、それが公務執行妨害で若者を射殺したんだけど、それが過失じゃなくて故意かどうかっていう裁判を翌日に控えてて、しかも実は同僚と示し合わせて嘘の証言をして無実になろうと企んでるやつだったってことが徐々にわかってくるっていう構図だ。

 つっても、緊急電話をとった自分が、電話口のせっぱつまった口調から「ムショ帰りの夫に誘拐された妻が子供に電話をかけてるふりをして警察に助けを求めてきた」と直感したことで、あとはよかれとおもってことをすすめていくんだけれども、途中、その女の自宅をつきとめて電話すると、幼い息子が出て、弟が腹を裂かれて殺されたという事実を知るにおよび、いよいよ夫の気が狂って子供を殺して奥さんをかっさらったんだって受け止めて、どんどん焦っていくっていうわけだけれども、いやまじほんとにオリジナルとまったく変わらない。

 驚いたのはひとつだけで、脚本が新しく書き直されてるってことだ。

 まったくおんなじ脚本を上手にリメイクしたって感じにしかおもえないぞ、アントワーン・フークア。

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THE GUILTY ギルティ

2022年04月01日 14時10分59秒 | 洋画2018年

 ◎THE GUILTY ギルティ(Den skyldige)

 

 ほんと、この頃、北欧映画はおもしろいな~。

 ほとんどが緊急通報指令室に奉仕しにきたヤコブ・セーダーグレンの電話の捜査と奮闘にだけ費やされるんだけど、それがなおさら緊迫感をあおるし、観客を惑わせる。そうか、誘拐されたかもしれないって疑われ、その連れ去られてゆくのを追いかけていく内に、あれ、これなんかおかしくないかっておもわせるのがほとんどないまま突っ走ってゆくグスタフ・モーラーの演出力はすごい。

 ヤコブ・セーダーグレンが翌日、査問を控えていて、それは警官であることをいいことに無実の若造を撃ち殺しちゃったことが問題になってるんだけど、口裏をあわせてくれた相棒に頼んで誘拐されたとおもいこんでる事件を捜査させるっていう脚本も、子供の証言をからませて、弟の赤ん坊の腹を裂いて殺したのが刑務所帰りの夫にちがいないとおもわせちゃう展開も、連れ去られる先がコペンハーゲンの郊外の精神病院ってところから、これはまずいぞって観客におもわせる佳境はいやまじ脱帽するしかないわ。

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