Terrace Valley Styleは、階段状に上層階がセットバックしてゆく空間。それによって地上の空気をそのまま上に伝えることもできるし、景観的にもなだらかな山の斜面をみているようで優しい。それは絶壁のような今のマンションの垣間に建つ町屋と比較しての話だが。
そうしたテラスを有効にマージナルスペースとして活用して行けば、素晴らしい界隈ができるだろう。テラスバレースタイルは、緩傾斜地であればそのまま建てればよく、実際に安藤忠雄さんが設計された六甲の集合住宅、あるいは設計者は忘れたが熱海のパサニアハイツなど実例も多い。
しかし更地に建てようとする場合に課題が発生する。それはセットバックした分、その背後になんとも利用しがたい無駄な空間が発生する。それは駐車スペースにでもして捨てておいてもよいのだが、なんとも陰湿な空間ができるので、やはりそこの活かし方を考えなければならない。この提案では僅かのセットバックだったので住戸の面積を広げるために利用したが、それでも既存マンションのようにウナギの寝床をさらに強調するような長い空間になってしまう。その場合は随所にライトコートなどを設けるといった稚拙な方法になるが、もう少し前向きに考えれば、奥行きがとれるメリットがあるのでアメリカ住宅のようなプランが考えられる。今度実際につくるときは、そうしたアメリカンハウス・プランでつくってみようと考えている。おそらくそれは快適で魅力的な居住環境になるかもしれない。今のマンションなら、それぐらいの居住環境は当然だと思うけどね。
もうひとつ課題があって、それは都市風。寒い北西からの偏西風は避けたいが、夏の南風は通したい。であれば南向きに7.2m×7.2mほどの風抜きの開口部と、それが抜けて行く開口部とを設ける必要がある。そのためにどこにどれぐらいの大きさの開口部を設ければよいかなどは、そしてそれが有効なのか無効なのかは、都市風のシミュレーションをし数値で検証しないとわからないことが多い。
そんに課題を抽出するために3DCGを制作してみたわけだが、それはもちろん模型でもよいのだが、やはりモデルをつくらないとわからないことが多い。それは文化系のように漫然と、そしてリアリティを欠いた理解していても、何も始まらないし理解もできていないのと一緒。やはりこうしたシミュレーションは数値化しないとね。3DCGだと数値シミュレーションのモデルになるし、そうしたコンピュータ上のシミュレーションをフルード・デザインダイナミックスといいます。
そんなふうにリアルなモデルをつくるといくつかの課題と示唆される解決方法が顕著に見えてきます。そのあたりにモデル化する意味があるのでしょう。
ハードウェアmac pro,ソフトウェアVue Infinite2016R3